ますますスマホが手放せなくなりそうだ。面倒なことも指先で片付く。いつ、どこにいても買い物ができ、出先から自宅のリビングで誰がくつろいでいるのか確認できる。便利さの追求はとどまることがないが、どこか危うさも感じる。米中貿易摩擦の一因ともいわれる次世代の移動通信システム5Gは、どんな暮らしをもたらすだろうか。
伝統的な仏壇の製造・販売に合理的な考え、技術革新を取り入れて成長。今年で創業154年の三村松(中区堀川町)は金仏壇の製造出荷本数で40年連続し、日本一を達成した。社主の三村邦雄さん(71)は、
「当社に入った頃、江戸時代から続く経営の仕方などに危機感を感じた。それが発奮する動機になり、経営改革へ挑戦する原動力になったように思う。むしろ恵まれた環境下では先々への備えがおろそかになり、戦後から今日まで様変わりした人々の暮らし、ニーズの多様化などを読み、先手で布石を打つことができなかったのではなかろうか」
入社して数年後、28歳で社長に。常に陣頭指揮を執りながら49年間、時代の流れを見据えてきた。いち早く伝統工芸の工業化を進め、国内では先陣を切り、家内制手工業と工場生産の両輪で仏壇づくりに革新をもたらす。
「1970年代は、注文に生産が追い付かない状況を呈していた。何より自社工場が必要と考えた。広島の吉島工場を皮切りに、鹿児島、宮崎と生産拠点を配し、規模を拡大。そのスケールメリットが効果を発揮した。自社工場で職人を育てることができる上、新製品を創り出すスピードも速くなり、全国のさまざまなニーズに迅速に応えられる大きな転機になった」
現在、月間1万本の仏壇を製造。近年、仏壇にもカジュアル化の傾向が強まっているという。漆塗りや金箔張りなど七匠の伝統工芸士の技が詰まった金仏壇ともなれば家が買えるほど。高級仏壇を望む層に応える一方、マンション世帯の増加に伴ってシンプルでモダンな仏壇もよく売れている。売れ筋は50〜100万円だが、三村松は1万円台から数千万円まで幅広い価格帯とデザインをそろえる。
「仏様に手を合わせる。こうした習慣が脈々と伝わってきたのは、心の安定や安らぎへの願いが根底にあると思う。先祖に感謝し、子どもらに謙虚な心を育む貴重な時間ではなかろうか」
店舗も工場も毎朝、社員そろって仏様に手を合わせ、それから始業する。三村さんは昨年7月、浄土真宗本願寺派全国門徒総代会会長に就任。幼い頃から食前食後にも手を合わす習慣の中で育った。創業は現在地で、初代の三村屋嘉助氏が仏壇販売を始めた。原爆で店も自宅も失うが、多くの職人の願いを支えに、仏壇製造を再開。
5月1日付で社長に就任した長男の和雄さん(42)は、さらに経営革新を進める。10年前からⅠT化に取り組み、効率・効果的な生産や財務の管理体制を整備。全店にPОSシステムを導入し在庫適正化を図ったほか、営業や接客にタブレット端末を駆使。スマホがなければ業務が滞ってしまうほどだ。代を重ねて経営革新に挑み続け、一番大事な〝感謝の心〟を継承していく構えだ。