4月1日、地場流通大手のイズミの創業者で名誉会長の山西義政さんが亡くなった。97歳。西日本の流通界を凌駕する大きな飛躍を成し遂げたその生涯は決して順風だけではなかったが、ワクワク感を持ってことに挑み、先の見えない日々に、何が何でも成し遂げてやるという信念と行動力に貫かれていた。面白き人生ではなかったろうか。
本誌1981年1月10日号で、当時59歳だった山西社長を取り上げた記事に、
「私は90までやるんだ」と豪語するだけあって毎日起床後と就寝前のヨガを欠かしたことがなく、人前でも体をエビのように曲げてみせる驚くべき体力年齢−と紹介しているが、まさに有言実行。90を過ぎても陣頭指揮を執った。
その辺りについて、2014年に発刊した山西さんの著書「道なき時代に、道をつくる」(297ページ)に、
『わたしは90歳を超えたいまでも床にぺったりと上半身がつく。こんなに体が柔らかいのは、60年も前に真向法という体操を始め、毎朝毎晩それを繰り返してきたおかげ、逆に、この体操を始めていなければ、いまのわたしの体はガチガチ。ここまで長生きしていなかったかもしれない』
面白き人生を歩んだ、その日々に誰しもが容易にまねのできないほどの努力があったことをうかがわせる。
著書に、仕事を通じて自らを磨く54の言葉をつづる。道に迷ったときなどに指針となる言葉も多くある。
▷感激しなくなったら、燃えなくなったら年寄りだ。変化を起こすことは、安定を覆すことである。不安を感じることもあるだろう。ただ、それを上回るワクワクするような気持ちに目を向けることが重要だ。若さとは、その気持ちのことである。
「次の店舗ではこんなことしてやろう」などと、寝られなくなるくらいのワクワク感がいつも背中を押してくれた。いま思い出しても楽しかった。毎日がドキドキ、ワクワクの連続だった。
変化を求めることは、今日の安定を捨てることであり、そこに不安は当然あるが、未来への期待感の方がもっと大きい。そこに目をむけられなくなったら、たとえ20代だって「年寄り」です。
▷厳しい環境をまるで「不運」のように嘆いていないだろうか。何とかしのごう、切り抜けようと画策するのは自分の原因から目をそむける弱者の発想だ。
▷自分のスタイルを貫き通すことも強さ。しかし、時には相手をしなやかに受け止め包容することも強さの一つ。変化はチャンスと心得よ。
▷新たなことをするばかりが革新ではない。同じことをやり続ける革新もある。凡事徹底。その力をあなどるなかれ。いずれ大きく花開く。
▷気迫あるもの、熱意あるもの。事を成す条件である。願いを叶える秘訣はシンプルだが、何が何でも成し遂げてやるという信念と行動力が大切だ。まるで野武士のようなむき出しで貪欲な意思。いまの若い人にも持ってほしい。
▷自分で自分を育てよ、他人は育ててくれない。上司も先輩もヒントを与えてくれるだけ−など。
若い人へのメッセージだが「人間を一番鍛えるのは仕事」と確信し、わが道を歩いてきた言葉にぶれがない。