中区胡町に本店を構える小料理屋永山の分店として3月30日、カフェのアルヒモリノナカ内でオープンした。本店で人気を集める定食を中心に食べ応えのあるランチを用意する。「お味噌汁とおにぎりの定食(2100円)」は、各8種から選べる味噌汁とおにぎりに、刺身や小鉢三つ、漬物が付く。
「秋口まで出す予定の『焼きトマトと夏野菜、牛すじの味噌汁』は、焦げ目が付くまで香ばしく焼いたナスやズッキーニと、だしで3時間近く煮込んだ柔らかい肉を入れて提供。トマトの酸味でさっぱりと楽しめます」
オリジナルメニューのマーラータン定食(1800円)は、豆乳ベースのスープに自家製花椒オイルを加える本格派。乾燥湯葉、かに団子、冷凍豆腐など本場の中華食材を使う。辛さを選べるため、女性も食べやすいという。
「本店に比べてゆとりのある空間なので、ベビーカーや子連れでも楽に入れます。行列の問題も解消。本通や金座街での買い物ついでに、気軽に立ち寄ってもらえれば」
江戸時代から伝わる、酒の生酛(きもと)造りは、蔵に住む微生物の自然な働きで発酵を促し、人工的に乳酸菌や酵母を加えない技法。現代的な速醸造りより難易度が高く杜氏(とうじ)の技の腕の見せ所という。これを木桶(きおけ)で醸すとさらに深い味わいの酒になる。一方、大型木桶を作れる職人が次第に姿を消し、伝統を危ぶむ蔵元も少なくない。
1873年(明治6)に創業の賀茂鶴酒造(東広島市)は、純米酒「木桶生もとver・2・0」を自社ECサイトで2月に限定発売。杜氏の中須賀玄治さん(40)は大阪の老舗、藤井製桶所に通って技術を学び、2023年に大2700リットルと小370リットルの木桶を自ら作った。24年に醸し、熟成させて昨年発売した第1弾に続き、今回も小型桶で試験醸造した後、1年熟成させた。こんな話をしてくれた。
「第1弾の仕込み中は発酵が始まるか不安で、夜中に飛び起きるほどだった。何度も桶をのぞいて状態を観察することで、微妙な酒質の変化に気付くようになった。どの酒造りでも、発酵は一度始まると止められない。数日かかる成分分析を待たずともタイムリーに異変に対応し、調整できる技量が付いたことで、他に手掛ける酒の質も上がった実感がある」
じっくり酒に向き合える製法を若手蔵人にも体験してもらおうと、ほぼ全員に何らかの工程で携わるよう促した。
目指すのは、賀茂鶴らしい飲み飽きしない食中酒。あっさりしすぎたという第1弾の反省を生かし、今回は麹(こうじ)造りを見直してコメをしっかり溶かす方針へ変更。
前回の4号蔵から8号蔵へ仕込みを移したことで、住みつく微生物の種類にも明確な差が生まれ、味わいにも変化が出た。通常は冷蔵する貯蔵を夏前から常温に切り替え熟成を促進。依然キリッと辛口だが、コメのうまみが際立った。ここから味はさらに変わるという。
「ラベルに長期熟成を促す文言を記し、変化を楽しむことを提案。ボトリングして出荷した状態が完成品と受け取られるが、この酒は出荷後に手にした人によって、それぞれに育ててもらう」
第1弾を買い求めた方が自宅で寝かせたところ、まろやかになったという。環境による熟成の違いを感じてもらおうと、第2弾はさまざまな場所で保管する実験を行った。
できあがった酒を、使用したコメが育った東広島市高屋町の田んぼの土中に埋めたほか、同市安芸津町のカキいかだに吊り下げ、水深10メートルの海中に沈めた。最後は神頼み。酒造りの神をまつる同市西条の松尾神社の本殿に寝かせている。限られた期間だが、杜氏自身もその変化を心待ちにしている。
その酒を、4月18日午前10時からの蔵開きで披露する。午前10時半と午後1時半の2回、中須賀さんによる1時間の無料トークショーを開き、それぞれ先着45人に試験熟成酒を試飲してもらう。
「付加価値やストーリーを問い直す一つの手段だ。これまでの酒造りを大きく変えるということではなく、積み上げたことは地道に続ける。寝かすほどうまい酒になる。ワインのように熟成によって高まる価値や魅力を広めていく」
昨秋、第3弾のコメ600キロを大桶で仕込んだ。これまでは小型桶で出荷本数は180本だったが、27年は1000本超の出荷を見込む。祝い酒なら、なおうまい。