8月まで営業していた「串焼酒房蜂ヤ」の店主が独立し、同じ場所で9月に新店を立ち上げた。旬の地元食材をメインに使うコンセプトはそのままに、県産鶏や豚、牛の串焼きに加えて一品料理などを提供する。
「豚の軟骨や、ミョウガの豚肉巻きといった珍しい串メニューも用意。国産牛の上ミノ串は希少な部位を使い、ジューシーさと歯応えが楽しめます。料理では豚モツのみそ煮込みが人気です。今からの時期はモツ鍋のほか、カキも何とか確保し、味わってもらえるようにしたい」
ドリンクは県内外の日本酒や、新酒の時期に合わせて入れ替える焼酎などをそろえる。最大11人が座れる座敷での宴会だけでなく、9席あるカウンターで一人酒も大歓迎という。
「猫がマタタビの効果でリラックスするように、お客さまには当店でゆったりとした時間を過ごしていただきたい。そして〝また、たびたび〟訪れてもらえる店を目指すという思いを店名に込めました」
西区井口に本社を構える、1978年創業の金物店です。手すりやサッシ、スマートロックなどを取り扱い、広島、山口、島根県の建築事業者へ販売や施工を手掛けています。
初代社長で現会長の父は根っからの阪神ファンですが、6歳離れた鯉党の兄の影響が大きかったのか、気付けば私はカープを応援していました。だからといって家族でテレビのチャンネル権を奪い合うようなことは特になく、うろ覚えですが皆で仲良く旧市民球場に足を運んでいた記憶があります。
2011年に結婚した夫もカープファン。16年には、元々ディズニーランド目的で関東旅行の計画を立てていましたが、その期間にカープが25年ぶりのリーグ優勝を果たすかもしれないと思い、9月10日の立ち見席の入場券を手配して急きょ東京ドームに。その日に優勝が決まり、歓喜の輪で緒方監督が胴上げされた瞬間を現地で見ることができ、大変幸運でした。試合後の道中でもCマークの帽子を被りっぱなしだったため、通りすがりの人から「おめでとう」と声を掛けられたほか、新聞社からの取材を受けるなど、ファンとして忘れられない1日でしたね。
専務としてサポートしてきた父から、昨年6月に社長を引き継ぎました。今年は地元中学校の職場体験受け入れを初実施。少しずつではありますが、カープのように地元に根付き、地域から必要とされる企業を目指して日々活動中です。
印刷物・印鑑制作を主体に創業157年の老舗、文華堂(中区国泰寺町)7代目の伊東由美子さんが11月2日に亡くなった。76歳。8日午前10時から中区竹屋町の西正寺で営まれた葬儀には、親交を深めていた多くの経営者らが駆け付け、早過ぎる別れを惜しんだ。
21歳で文華堂の創業家6代目と結婚。8人の大家族は女手に恵まれており、家業の職場に身を置く日々。子息3人の母、嫁、主婦業の合間を縫って仕事をこなしていた。しかし、夫が脳内出血で倒れた。48歳で社長に就く。その日から20年近く介護にいそしみ、懸命に経営を学んだ。
本誌の取材にも度々応じて飾り気なく、実直に胸の内を明かしてくれた。
「私が35歳の頃、採用した従業員との問題で苦しんでいた時と重なり、和菓子の叶匠寿庵を創業した芝田清次さんの講演会に参加した。これまで多くの経営者から、きれい事だけでは経営に収まらないよと聞かされていた。だけどどうしても納得できないでいたのに、芝田さんの話を聴いて、すっと合点することができた。何よりも人を信じる心の経営が大事だという。迷いが消え、自然と涙があふれてきた。それから1カ月もしない頃、お茶請けの菓子が語りかけてくる気がして、それが芝田さんの菓子と分かり、矢も盾もたまらず創業地の滋賀県へ向かった。亡くなられるまで7年間ほど通い、育てていただいた。人は自分を映す鏡。自分をごまかさない。心美しく、生きていると実感のできる経営を全うしたい。次々難題が押し寄せてくる。そうした日々の座右に『過去が咲いている今。未来の蕾でいっぱいの今。未来は自由、全て自分次第』の言葉を置いている。原因があって結果がある。故に日々精進と肝に銘じている」
何役だろうと全力を尽くす原動力はどこから湧いていたのか。三男の剛社長は、
「伊東家に嫁ぎ、父の顕が病に倒れて本意でなかったと思うが、代表取締役を引き受けることになった。決して暖簾を降ろすことはできない。その執念に突き動かされているようでした。不安を払しょくするため日々、学び続けるほかなかったのでしょう」
礼儀や礼節に厳しく、先代から縁を大切にする心を学んだという。
経営を譲った後、自らの経験を原点に〝参謀〟を育成する新会社を2020年12月に設立。とりわけ中小企業にとって社長を補佐する参謀役の存在は重要。女性社長の約3割が配偶者からの承継というデータもある。自分自身がかつては夫、社長にとって誰よりも心を許すことのできた参謀役だったのだろう。
中小企業の社長夫人は社長の予備軍といわれる。だが、自ら社長に就くと相談できる相手のいない心もとなさや漠然とした不安が突き上げてくる。参謀塾は女性の経営者、幹部を対象に4年間で約60人が学んだ。剛社長は、
「特に中小企業は経営者と社員の皆が一枚岩とならなければ成長発展はできない。そこに到達するまでの道がまさに経営そのものと決心していたのでしょう、近年はぶれることがなくなっていた。どんなに苦しくとも人として正しく行動していれば、必ず明るい未来が訪れると決め込んでいたように思う」
感動と感謝。人の心を信じた経営、人生から何事にも代え難い宝物を受け取ったのではなかろうか。