広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2021年8月26日号
わくわくしている

無観客だったが、東京オリンピックのテレビ中継で、アスリートの懸命な姿に心を動かされた人も多かったのではないか。続いて東京パラリンピックが8月24日開幕し、9月5日まで開かれる。大会の期間中、世界をつなぐ空港の存在が改めて浮き彫りになった。新型コロナ禍で閑散としていた国際空港はひととき息を吹き返したが、地方の空港は依然として厳しい。
 7月に完全民営化した広島空港。2050年度で年間旅客数586万人の数値目標を掲げる。コロナ禍前の18年度に比べて約2倍。国際線は同7倍の236万人を見込んでいる。小型機やLCC(格安航空)を主体に、アジア各地域の路線誘致とデイリー化を段階的に進め、最終的に現在の2.5倍の国内・国際30路線をもくろむ。
 民営化のポイントは大きく三つ。これまで別々に運営されていた滑走路などの「航空系事業」(国)と空港ビルなどの「非航空系事業」(民間委託)を民間が一体的に経営し、全体を見通した収益改善策が可能になったほか、国が特別会計で収入を管理していた全国ほぼ一律の着陸料の自由化によって路線誘致を促進。商業エリアの集客拡大で増えた施設収入を着陸料の引き下げに充てることができる。
 民営化に当たり、三井不動産や東急、マツダ、中国電力、広島銀行、広島電鉄など16社が出資し、昨年11月に広島国際空港を設立。出資者の広島マツダ取締役で新会社の施設営業部参与を兼務する槌谷省悟さんは、
「おりづるタワー立ち上げから携わったノウハウを広島のために活用したい。改めて広島空港のブランド力、地域からの期待の大きさを実感している。搭乗者だけなく、空港での体験や買い物を目的に来てもらえるよう、ブラッシュアップしていく」
 7〜8月にエイチ・アイ・エスと竹原市立賀茂川中学校との共同企画で空港体験の日帰りバスツアーを実施。観光事業者と連携して中四国の周遊需要の創出を目指し、地域一丸でエリアプロモーションに取り組む。施設内で物産展などのイベントを定期的に開くほか、多彩な期間限定店を受け入れる。一押し商品を並べ、来場者を飽きさせない工夫も凝らす。7月には2階商業エリアに3店舗とイートインスペースを新設した。今後もビル改修や免税店の拡張などを計画する。
 運営参画を決断した松田哲也会長兼CEOは、
「大企業と一緒に大きな事業を手掛けてみたかった。当社の店舗運営の経験や知識の提供はむろん、各分野のプロフェッショナルから多くを学ぶ機会になる。滑走路とビルを一体運営できるからこそ創意工夫しやすく、搭乗までの待ち時間をくつろぎ、楽しむことのできる施設を目指す。当社はおりづるタワーから平和のメッセージを発信してきた。大きな舞台に臨み、わくわくしている」
 広島国際空港は30年間の運営権を国から185億円で買い取り、ビル改修などに5年間で約200億円を投じる。6月には総額約326億円の協調融資が決定。コロナによる運休で20年度の旅客数は1993年の開港から最低の約73万人。上昇気流をつかみ、広島の元気につなげてもらいたい。

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