G7広島サミット初日にグランドプリンスホテル広島で会議を終え、各国首脳は観光型高速クルーザーで宮島へ。船上のテレビカメラは夕日に染まる美しい瀬戸内海の風景を映し出し、世界を魅了したのではないだろうか。
翌日の会議で、海洋汚染対策や生物多様性の保全などがテーマになり、具体的に取り組むための連携強化が確認された。中でも海洋プラスチックごみ問題は危機的な状況に陥り、解決が急がれている。2019年のG20大阪サミットは50年までにプラごみによる海の追加汚染をゼロにする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を採択した。
これを踏まえ、広島県の湯崎英彦知事は廃棄プラスチックの新規流出ゼロを目指す「グリーンSEA瀬戸内ひろしま宣言」(GSHIP(ジーシップ))を表明した。40年までにペットボトル、プラボトル、食品包装・レジ袋の主要3品目を、50年までに全てのプラスチックの流失をゼロとする方針を打ち出した。21年6月から県内企業や団体を巻き込み、プラスチックの使用量削減、プラごみの流出防止、情報発信などに取り組んでいる。これに賛同する会員は110社・団体(市町含む)に上る。
G7サミットも意識を醸成する場になった。試飲食ブースで包装商社のシンギ(中区)が開発したバガスモールド(サトウキビ由来の生分解性素材)製のお好み焼き容器やエフピコのエコトレーなどを提供した。清掃団体を登録し会員に参加を呼び掛ける仕組みも加速する。サミットの会場となった元宇品の海岸と宮島の包ヶ浦では開催前の清掃活動に380人が参加した。事務局を務める県環境保全課の増田晶次主査は、
「カキ養殖事業者にプラ資材の流出防止を求めたこともあり、県内海岸の漂着物量は18年度の72.4トンから21年度には47.9トンにまで減った。実は海洋ごみの7〜8割が陸上から流れ込み、全漂着物のうち生活由来プラごみが27%を占める。普段から使っているプラ製品の回収・再利用や代替素材への移行が急務。リデュース(減量)、リユース(再利用)、リサイクル(再資源化)、リニューアブル(再生可能)の施策を強化し、個別に取り組んでいた企業や団体を結び付け、連携を促すのがGSHIPの役目。相乗効果や新たな仕掛けを生みたい」
22年度までの連携プロジェクトとして、全国清涼飲料連合会は飲料容器以外を入れづらい設計のリサイクルボックスを広島市内中心に設置し、異物率を42%から25%に減らした。イズミはリサイクル会社などと協力し、カキ養殖用パイプを一部再利用した買い物かごをゆめモール西条で導入。商業施設レクトはプラ気泡緩衝材の回収・再利用に取り組む。カルビーなどはごみ箱の利用データ分析を基に回収頻度を最適化する仕組みを運用し、周囲の散乱がほぼ無くなったという。秋山日登美課長は、
「広島の宝である瀬戸内海の環境保全を目指し、先頭に立って県民や事業者と連携しながら推進していく」
外国人観光客も目立つようになった。JR西日本と瀬戸内海汽船はG7各国首脳が乗船した観光型高速クルーザーの特別シートをアピール。サイクリング人気も見越し、しまなみ海道周辺の定期航路時刻表の閲覧やEチケット購入のサイトもできた。観光と海洋汚染対策は切り離すことができない大命題。県民総出の力が求められている。