広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2024年3月7日号
新しい日本をつくる

人口減と少子高齢化に歯止めがかからない。厚生労働省が発表した人口動態統計の速報値によると、2023年生まれは75万8631人で過去最少を更新。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口では70年に8700万人となり、20年の1億2615人に比較して3割減。50年の生産年齢人口は21年に比べて2175万人減る。
 高度成長期を支えた人口ピラミッドが逆転。あらゆる分野で人手が足らなくなり、従来の雇用形態が根底から崩れる。企業は今後、持続的な発展をどう確保していけばよいのか、かつて経験したことのない難問にぶつかる。
 西日本海外業務支援(協)(通称=西海協、安佐南区伴南)は02年に設立以来、累計で7000人以上の技能実習生・特定技能外国人を受け入れてきた。全国の38都府県で90職種のうち35職種(47作業)に実績があり、組合員数は1月現在で155社。在籍者は2000人を超え、西日本で最多規模へ成長を遂げている。首都圏や全国展開への足掛かりをつかむため、22年に東京事務所を開設。今年1月にはベトナム・ホーチミン市に「アセアン事務所」を開いた。池田純爾理事長は、
「現在、最も多く受け入れているベトナムの送り出し機関と組み、一定水準の人材を掘り起こしていく。現地の大学や高専との提携も視野に入れており質の高い、安定した教育を行った上で送り出す体制を構築していきたい」
 在留資格を持ち国内で就労する外国人数は昨年10月時点で初の200万人を突破した(うち技能実習生41万人超)。40年には3倍強の674万人と予測されている。
 日本で習得した技能を母国で生かすことを目的に、1993年に創設された外国人技能実習制度が実態とそぐわなくなってきたことから発展的に解消し、外国人の人権保護やキャリアアップ、安全安心に暮らせる共生社会に重点を置く制度整備の方針が昨年11月に打ち出された。日本人だけで企業活動を続けることが難しくなってきたという認識が背景にある。
 西海協は、母国と異なる日本の生活様式や日本語の習得を重視しており、N1〜4合格者数は昨年12月現在で2912人を数える。安佐南区の研修施設でゴミ分別や自転車講習、防災教育など体験型指導を徹底。習慣や文化の違いから起こるささいな行き違いを未然に防ぐだけでなく、制度の見直しを見据えながらキャリアアップやキャリアパスを通じて〝自立できる外国人材〟を輩出するための体制整備を急ぐ。
「小さなほころびが大きな分断につながる。誰しも言葉が通じないことで起こる悲劇には遭いたくない。国籍の異なる人々が仲良く暮らす共生社会をつくることが最も大事。国内で就労する外国人はますます増えていく。これまで重ねてきた実績と培ったノウハウを生かし、いま新しい日本をつくる気概が必要と思う。新しい制度を契機とし、多くの国、人から選ばれる日本の受け入れ態勢を整えていくために力を尽くしたい」
 外国人材の確保をめぐって国内外で競争が激しくなると予想される。安心して働き続けられる包括的サービスの提供とともに、やりがいのある人生設計を自由に描くことができる生き方を後押しする。自立こそ誰もが願う本来の姿ではないだろうか。国籍を超えて助け合う、心が通う社会を失ってはならない。

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