広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2024年3月14日号
脇役戦略で好調

常識をひっくり返すと、時にとんでもないチャンスが訪れる。三島食品(中区)は風味のいい赤シソを使う主力商品「ゆかり」がヒット。10年ほど前から醸成してきた〝脇役戦略〟を一段と加速し、3期続けて過去最高売り上げを更新。今期も増収を目指す。
 ふりかけでは後発メーカーながら創業者の三島哲男さんの口癖でもあった「良い商品を良い売り方」に徹し、全国ブランドへと成長した。温かいご飯にふりかける役割だけでなく、調味料としての出番に着目。肉や魚をはじめ取引先のさまざまな食材や商品に寄り添う〝脇役〟と名付けた販売戦略を展開している。
 米の消費量は下降線をたどるが、ゆかりの売り上げは上昇。量販店や大手食品メーカーで扱う、いわば〝主役〟の販売を押し上げ、結果的に脇役も潤う好循環が生まれているという。末貞操社長は、
「十数年前に店頭で関連商品を一緒に陳列するクロスMDを展開したところ肝心のゆかりは目標を下回ったが、タコは8倍、長芋は10倍売れたという。ゆかりを売ろうとしたから落胆したかもしれないが考え方を変えれば大成功。例えば、タンパク質の摂取が望ましい高齢者に、ゆかりの風味を添えると食事が進むようになる。赤シソの力が役に立つ。ここに着眼すると可能性は大きく広がってくる」
 ゆかり味のパン粉をまぶした半生チキンカツをイズミで1年以上販売し「これはいける」と手応えを得た。脇役戦略を実現する「メイン食材販売支援プログラム」を1年前に始動し、社長直属の専任として営業本部広域マネージャーの吉本英治さんを抜てき。ゆかりのパッケージに見立てたコスチュームをまとい、提案の相乗効果を導き出す空気を演出する。〝赤しそ生活〟が目を引くのぼりのほか、ゆかりの紫に染めた販促一式を無料で貸し出す。ユニークで何だかおもしろそう、俺も私もやってみたいと思わせる企業風土が戦略を引っ張った。
 二代目の三島豊会長は「会社に関係することなら勤務中でも自由にやっていい」という〝B面活動〟を提案。その精神を末貞社長が引き継ぐ。
「当社では変化を起こす人を〝変人〟、奇跡を起こす人を〝奇人〟と呼ぶ。アイデアを湧き立たせ、語り合い、周りも巻き込んで智の連鎖が起こる職場が理想だと思う。何事も本人のやる気次第。脇役戦略は、まず取引先の意欲を引き出し、息の合ったタッグを組んでこそ成果が出る」
 2月に幕張メッセであったスーパーマーケット・トレードショーで支援プログラムを初披露し、反響があったという。原料素材の赤シソは20年以上、独自に品質改良などの研究を重ね、一方で「商品は売るな、食生活習慣を売れ」と大号令を掛ける。綿密に計算した縦糸に、楽しんで働く横糸をうまく織り成し、好業績の原動力とした。
「人は往々にして言うこととやることが違うことがある。有機がいいからと価格が高くゆがんだ野菜を常に買い求めるだろうか。消費行動は正論ではなく実論に則している。見間違えてはならない。B面活動で楽しみ、面白がって仕事に取り組む。思いがけないユニークな発想は、生き生きとした心から生まれてくるのではないでしょうか」
 ゆかり3姉妹にひろし、かつお、鮭ひろしと続き、1月にしげきが加わった。SNSで認知度を高め、ひろしは原料となる広島菜の生産を引き上げているという。

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