広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2023年4月27日号
広島でやろうやあ

どういう理由なのか、広島県が2年連続し、県外への転出が県内への転入を上回る「転出超過」で全国ワースト1になった。
 総務省の2022年「住民基本台帳人口移動報告」によると、前年比2048人増の9207人に上り全国で最多。2位は愛知県の7910人。
 転出超過の主な要因とされるのが、就学や就業にともなう若年層(20〜24歳)の県外流出。広島は全国的にも進学率が高く、中国5県で突出。行き先は東京や大阪が多い。卒業後もなかなか広島へ戻ってこない。中小企業にとって人材確保は大問題。大企業が地方での採用を強化しており、地元企業の採用環境はさらに厳しさを増す。
 何とかならんのか。県は、地元の魅力的な企業を若者に知ってもらう取り組みを本格化させている。県内高校や県内外の大学で、地元経営者らによるオンライン講座、出張講座を始めた。若年層の段階から地元企業をよく知っていると、県外大学へ進学して出身地を離れてもUターン希望が高くなるという調査(独立行政法人労働政策研究・研修機構)もある。高校生・大学の低学年次から県内企業の特長や魅力を伝えていく、その第一歩から踏み出した。
 前年度の高校講座は県内30校で実施。県内62社の経営者や現場担当者らが魅力を語り、計6325人の高校生が参加した。授業後のアンケートで約8割が広島での就職を意識したと回答した。
 イカ天製造のまるか食品(尾道市)は、福山葦陽高校でオンライン授業。動画を使って企画・製造・営業それぞれの業務内容を説明した。新商品の試食場面や営業担当者の移動中を密着撮影した内容で、20〜30代の社員が現場の臨場感とともに伝えた。仕事で大変なことや、やりがいについての質問が飛び、企画部門では他社商品との差別化に対して「企画会議で突っ込まれて大変」、ノルマが大変というイメージが強い営業部に対して「ノルマというより、スポーツのスコアのように捉えている。いいスコアを出す、勝負に勝つ。そのために準備をする」といった仕事への意識を語り、高校生は働くことへのイメージを膨らませた。
 4月から新年度が始まり、県内高校では40校で、80社の出前講座を予定。前年度に比べて大幅に増やす。大学では県内14校、県外10校(オンライン)で県内企業を紹介する講座を開く。
 県は「AISAS」(注目=Attention、関心=Interest、検索=Search、行動=Action、共感=Shareの頭文字)の行動モデルに基づいて、県内就職のステップを作成。まずは県内高校生約7万人と、県内大学生5万5000人に学内授業を通じて県内企業を幅広く知る機会を提供し、興味・関心を促す。
 オンラインインターンシップガイダンスや、県内企業・大学と連携したインターンシップ、地元企業で働く若手社員との交流会も計画。さらに企業自らの発信力・採用力の向上を図れるよう、自社の魅力の伝え方や発信手法のブラッシュアップも後押し。大学生が自ら地域企業を調べ、就職先として比較検討できるようつなげていく。
 大都市へのあこがれが根強くある一方で、近年は地元で自分らしく働き、暮らしたいと思う人も増えてきているという。こつこつ地味だが、1人増えればやがて大きな流れになる。広島でやろうやあ。

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