広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2019年6月20日号
タイムリーに手を打つ

台帳が「いろはにほへと」で仕分けられていた時代。慶応大学を卒業後、近代化への覚悟を決めて三村松(中区堀川町)に入った社主の三村邦雄さん(71)は28歳で社長に就いた。江戸時代から受け継がれていた社内の慣習や当たり前に危機感を抱き、近代化にまい進。創業154周年を迎えた今年、金仏壇の製造出荷本数で40年連続日本一を達成した。三村松は全国各地のニーズの変化に柔軟に対応できる自社製造〜販売の一貫体制を敷く。
 入社後、22歳の若さで就業規則の作成に着手。さらに、既に用地を確保していた吉島工場の設計から建設まで手掛け、開業にこぎ着けた。
「大学の卒論テーマは産業革命。エネルギー革命によって蒸気で機械が動かせるようになり、ものづくりの現場は大変革。その卒論が原点だったように思う。仏壇づくりは問屋制家内工業で成り立っていたが、これと自社工場生産との2本立てで高度成長の波に乗った」
 仏壇づくりは素人だったが当時、途切れることのない注文に追われ、納期待ちが慢性化。何としても直営工場が必要と考えていた。漆塗りや箔押しの職人が中山工場で仕上げを受け持っていたが、一人前になるには10年かかる。このままでは現状を打破できない。組合の紳士協定もあり、ベテラン職人の引っ張り合いはご法度。そこで工程を細分化し、自前の職人の養成と手仕事を効率化させた。
「名人も最初から名人ではない。経験を重ね失敗もして技術は磨かれる。新人には段階的に技術を習得してもらった。自社工場だからこそ職人を育てることができた。問屋制生産では納期が長く工賃の高い大型の仏壇、中型は広島工場、小型は鹿児島工場と分担し、あふれる注文に応えた。生産効率が大幅にアップすると同時に生産規模も拡大。原材料の買い付けをはじめ、あらゆる場面でスケールメリットが有効に機能し始めた」
 高度成長が始まったタイミングに合わせ、量産体制が軌道に乗ったと振り返る。
 生産拠点は広島や九州、素材加工や部品製品を担う海外も含めると11工場に上る。直営10店舗を擁し、製造卸65%、直販35%の扱い。近年は神社仏閣の新調・修復、仏壇の修復受注も増えているという。広島宗教用具商工協同組合の理事長も務める三村さんは、伝統工芸技術の継承にも力を入れる。若手職人の腕を磨こうと全国伝統的工芸品仏壇仏具展に毎回出品し、多数の受賞歴を持つ。
 2016年9月には、仏壇通りの本社隣に「和の工芸館」を開設。マンション世帯が増える中、今の生活様式にマッチする伝統工芸〝モダン仏壇〟を提案する。ここにも若手の発想を生かす。モダンでシンプルだが、例えば、引き出しは組み継ぎ(釘・金具など使わない凸凹の接合法)で作るなど、伝統の基本と技はしっかりと押さえる。
「最新設備の導入や機械化などのほか、店舗展開も早め早めに手を打ってきた。時代を読み、常にタイムリーに先行投資すること。これが先々で強い体力を養い、いざという時の備えになる」
 令和の時代を迎え、5月1日付で長男の和雄さん(42)が社長に就任した。〝和〟の新時代を託す。−次号へ。

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