広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2019年9月12日号
本格的な移民社会へ

深刻な人手不足を解消するため、外国人材の受け入れ拡大を目的にした「改正出入国管理法」が4月から施行。政府は介護や建設、外食業、ビルクリーニング、宿泊などの14分野を対象に、5年間で最大約34万5000人の受け入れを見込んでいる。新在留資格「特定技能」を盛り込み、これまで認められていなかった単純労働に門戸を開放。日本で働いている技能実習生も多く移行する見通しという。
 自動車や造船など、ものづくり産業が集積する広島県。外国人技能実習の在留資格者は1万5315人(2018年12月末)に上り、愛知、埼玉に次いで全国3番目に多い。そもそもは「日本で技能を習得して母国で生かす」という国際貢献を目的にした技能実習制度だが、ものづくり産業に携わる、特に中小企業にとって欠かすことができない支えとなっている。
 中国地方の自動車部品メーカーなどの製造業向けを中心に、累計5000人の受け入れ実績を持つ外国人技能実習生監理団体の西海協(さいかいきょう)(西日本海外業務支援(協)、安佐南区伴南)の池田純爾理事長は、
「改正法によって外国人を受入れる人材関連サービスの間口は確実に広がってくる。一方で、人材派遣会社の新規参入などに伴い競争激化は必至。国内だけではなく、外国人材の受け入れに積極的な台湾や韓国など諸外国との競争もある。これからもなお外国人から選ばれる日本であり続けるために、官民が一体となって外国人が安心して働き暮らせる社会インフラを整備していく必要がある。組合設立時から掲げる『一流を目指す』という理念をさらに徹底。人間の尊厳を大切に、より誠実な業務を遂行していく。この基本方針に変わりはない。組合を取り巻く環境も含め、組合の存在価値を高める絶好のチャンス。何よりも働く誇りの持てる職場とすることが、一番の目標です」
 と意欲をにじます。  互いに敬意を持つ
 02年10月に組合を設立。翌年11月、第一期生として中国から女性10人を受け入れて事業を本格スタート。池田理事長は組合立ち上げから業務に携わってきた。
「外見は日本人と同じながら生活習慣以上に価値観の違いに驚いた。日本人同士であれば、あうんの呼吸で進むことも、主義主張が強く一筋縄ではいかない。常識も異なる場合がありトラブルになることも。来日する外国人の方に日本の文化や習慣、そして日本人の価値観などを理解していただく。私たち日本人も彼らの文化を知り、互いに敬意を持つことが、大切だと実感している」
 組合員は自動車関連や機械器具製造、金属加工、造船など115社に広がり、実習生の受け入れ先は現在74社を数える。むやみに拡大路線を進めることなく、基本方針に沿って着実に、送り出し機関〜技能実習生〜受け入れ先企業の間をつないできた。その堅実な歩みが信頼を醸成し、年々実績を押し上げてきた原動力になったのだろう。
 少子高齢化、人口減により日本の生産年齢人口は減少の一途。外国人材の活用によって人手不足の解消が期待される一方、日本が経験したことのない本格的な移民社会へ突入する。

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