広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2019年11月21日号
木のまち復権へ

廿日市市は古くから木のまち、木工のまちとして発展してきた。市域の約86%を森林が占める。東証1部上場企業で、連結売上高約630億円のウッドワンが本拠を構え、廿日市木材港・木材工業団地には製材業など木材関係企業が多く集積している。
 豊富な森林資源を活用した木工品やけん玉などの木製製品、宮島細工は県から地域産業資源の指定を受け、2016年から〝木のたびネットワーク〟の取り組みが本格化。思わず手で触れたくなる木肌、見ているだけで和む木工製品を集めた展示販売会「LIVING/CRAFT(リビングクラフト)暮らしをつくる職人たちの木工展」が10月から約1カ月間、同市地御前のインテリアショップloopであった。木工製品の職人らでつくる「はつかいち木工研究会」主催。各工房の腕利きが、新たなチャレンジに踏み出そうとしている。
 メンバーは、一枚板や無垢(むく)材のテーブルを手掛ける常藤家具きくらの鈴木徳俊さん、中国山地の木材で小物や注文家具を作る木工房三浦の三浦孝治さん、カントリー家具WOODY(ウッディ)の廣瀬啓行さん、1925年創業の益田畳店の益田健一郎さん、ろくろ技術を生かした木工玩具や階段手すり棒を製造する、しみず木工所の鍋谷一也さん、注文家具全般の岩井家具工房の岩井浩二さん、創業80年の倉本杓子工場の倉本充明さん、椅子やオブジェ製作の河野令二さん、一級建築士事務所Treeの博多努さんの9人。
 市や商工会議所が企画し、2017年に活動を始めた。商品開発の輪を広げようと、それぞれが試作する一方で、共同してマルシェ出店や成人式のノベルティ試作、地元の料亭やカーディーラー向けにヒノキ、ケヤキ、クリ、キハダ、トチノキなどの市産材を使った製品を納めたほか、骨壺の試作やデザイナーとコラボした〝現代こけし〟や〝絵付けびわ杓子(しゃくし)〟を手掛けた。会長を務める鈴木さんは、
「木工の魅力を知ってもらうには、まず手に触れてもらうことが先決。木工展では売れ筋を再確認する必要を痛感した。試作段階だが市産材を活用し、市役所ホールに置く椅子を製作中。木材加工の技が伝わるデザインにし、強度などを検証していく予定」
 常藤家具はたんす、ベッドが作れば売れた時代を経て、ベッドメーカー向けにフレームを納めていたが、輸入品と価格競争する設備投資はリスクが大きく、「このまま続けても先行き危うい」と事業転換を決断。20年前にショールーム兼店舗を構えた。現在は無垢材の一点ものを求めて遠方から訪れる客も少なくないという。チャレンジ精神が新たな客層を生んだ。
 森林の育成〜生産・流通・加工・販売〜消費を促す目的を掲げ、木のたびネットワークは山林経営や素材生産、建材メーカー、家具製造、工務店が関わり合いながら新たな木材需要の創出を目論む。木工・クラフト関連事業者もネットワーク形成の一員に位置付ける。市の担当者は、
「昔は地元の木を切り出して家を建て、数十年後の使用を想定して植林する森林資源の循環ができていた。しかし木材需要が減少傾向の中、このまま手をこまねいているわけにはいかない。ピンチをチャンスに、木のまちを復権する絶好のステップにしたい」

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