広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2020年5月14日号
コロナに負けるな

日銀の黒田東彦総裁は、4月27日にあった金融政策決定会合後の記者会見で「中央銀行ができることは何でもやる」と断言。社債とコマーシャルペーパーの購入枠を拡大するほか、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた企業や家計の資金繰り支援に向け、金融機関への資金供給を拡充する方針という。
 新設の持続化給付金や雇用調整助成金、無利子・無担保融資などの支援制度がいろいろとあるが、それがばらばらでは、実際に使えない制度に終わる懸念もあり、そうならないよう分かりやすく情報を整理して事業者に提供する機能が必要ではなかろうか。
 広島銀行グループは新型コロナで影響を受けている企業を支援する投資ファンドを6月中に組成する計画だ。取引先の事情をよく知り、事業者と直接向き合って相談に乗る立場の金融機関や経営コンサルタントの責任は重い。いまこそ本領を発揮して「倒産を出さない、雇用を守る」という最前線の防御ラインが崩壊しないよう、スピーディで強力な援軍が待たれる。
 ひろぎん経済研究所が県内企業約2000社(有効回答510社)に実施した「新型コロナ感染拡大の影響調査」の一部を抜粋すると、
 公的機関による支援施策のうち利用したいものは、▷資金繰り支援(貸付要件緩和、税納付期限延期など)が最も多く、▷雇用助成金などの特例措置(休業手当、学校休止による休暇の賃金助成など)、テレワーク導入支援など。通常業務で困っていることは、▷感染予防のための物資(マスク、消毒液など)の不足、商談などの営業活動の停滞、国内や海外への出張困難、従業員の出勤困難など。同調査は、政府が「緊急事態宣言」の対象地域を全国に拡大する前の、4月13日までの回答到着分を集計したもので、その後事態は急速に悪化しており、引き続き6月にも同様の調査を予定。同研究所の水谷泰之理事長は、
「企業にとって通常の資金調達が難しい状況ならば、政府が銀行借り入れに保証を付けたり、政府系金融機関を使った融資や、日銀による社債購入などの手段が講じられることになるが、大きな悩みは、新型コロナの影響がいつまで続くか見通しがない中、いつまでに返せるかが分からない点に尽きる。事業者は借り換えや期限延長などの可能性を念頭に置いて、金融機関との一層の信頼関係を強化しておくべきだろうし、金融機関は従来の貸し出しにとらわれることなく、永久劣後ローンや優先株といった手法の仕組みの活用を柔軟に検討していくべきだと思う」
 バブル崩壊後、苦境に立った日本企業は自己資本を充実させ、手元現金を積み上げてきた。これは、金融危機を経験した自己防衛のための企業行動の結果だが、一方で、これによって日本企業は積極的な投資を控え、成長のチャンスを逃してきたといわれる。
「皮肉なことに、今回のパンデミックに直面して、手厚い現金は企業経営の安定性に大きく寄与している。成長と安定のバランスをめぐる議論は何とも難しい。しかし、現在の困難を克服する努力から、未来へのイノベーションが生まれると信じ、いまこそ知恵を絞り、踏ん張り、そのときに備えることが大事」

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