広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2020年6月25日号
決断で、生まれ変わる

土地勘がなくても、カーナビさえあれば目的地へたどり着く。運転中、ハンズフリーでレストランの予約も可能。技術革新により、車が際限のない進化を始めている。一方で、ピーク時の1994年度に全国6万カ所を超えた給油所数は、2018年度に半分以下の3万カ所にまで減少した。省エネ車の普及などにより、燃料油の大幅な需要減に直面。構造的な低収益体質で廃業や倒産も多く、元売りの集約や系列特約店の統合再編も進展している。
 斜陽産業ともいわれる石油業界にあって、環境対策や災害などに対応した給油所運営に積極的な設備投資を続ける綜合エナジー(安芸郡府中町茂陰)の取り組みが、次第に成果を挙げてきた。
 2013年3月、本社所在地に開業したペガサス新大州橋SSをはじめ、セブン−イレブンとの一体運営の災害対応型給油所は現在、佐伯区五日市町や安佐北区亀山、安芸郡坂町に計4カ所を展開。全9給油所のうち、7カ所は自家発電設備を備えた、資源エネルギー庁認定の住民拠点SSで今後、全店認定を目指している。澤井昇三会長は、
「言うまでもなく災害は突然やってくる。日頃から災害対応型として運営しながら、怠りなく訓練していれば、慌てふためくことなく迅速に対処できる。燃料油を売ってどうやってもうけるかと考えるよりも、いま顧客が何を求めているのか、安心や安全、便利などに焦点を絞り、地域に役立つ運営に徹することが大切ではないだろうか」
 災害対応型1号店の新大州橋は非常時の水や電気の確保のために諸設備を充実。いわばラボ店だ。太陽光発電設備と蓄電池を備え、通常時は売電、停電時は非常電源に切り替える。雨水と地下水で補い合う地下貯水槽でトイレや散水などに再利用。上水は昨年設置した5トン容量の屋上タンクにいったんためて使用している。環境に配慮した自己完結タイプの施設機能を平時にも運用。直営の給油所と坂油槽所では非常時を想定した定期訓練を重ね、〝いざ〟の時に備える。
 澤井会長は27歳の時、父親が急逝し、給油所運営を継ぐことになった。「どうせやるなら人の役に立つ仕事」と奮起。ユーザーからの打診を受け油槽所を取得したほか、その後もプリペイド方式の燃料油販売など給油所運営に新機軸を打ち出す。18年前に24時間営業に踏み切り、今では全店に導入。自動車販売も手掛けた。失敗もあったが、来店頻度など給油所特有の顧客志向を考え、求められているものは何かと追求し続けた。
 ようやく手応えを得た。24時間営業のコンビニとの一体運営の災害対応型給油所として地域になくてはならない拠点機能を担う。24時間洗車も成果を挙げ、20年2月期は過去最高の売り上げ87億円を計上。増収ペースに乗せる。9給油所の平均顧客数は全国でもトップクラスという。
「1号店は元売りからも危ぶまれ、不況下での新たな投資を、誰もが不安視した。世の中に役立つ。この決断によって地域に支持される給油所に生まれ変わることができた」
 相次ぐ災害を契機に、国も給油所の機能を地域のインフラとして重視。同社は今秋にさらに進化した給油所をリニューアルオープンする。

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