広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2021年3月11日号
M&Aの勘所

広島県内の企業の後継者不在率は71.3%に上り、多くの中小企業が事業承継の悩みを抱える。こうした事情も背景にあるのか、近年、M&A(企業の合併・買収)の手法によって事業拡大や新分野進出などのさまざまな経営課題を解決し、一気にチャンスをつかむ事例が増えてきた。
 広島銀行は、2019年度のM&A相談件数が628件で、うち27件を成約。過去10年で3倍にまで増えたという。大手のM&A専門会社が全国に事業を広げる中、地方では珍しいM&A専門のクレジオ・パートナーズ(中区紙屋町)が頭角を現し、急速に実績を挙げている。18年4月に設立以来、3年間にM&Aで60件、事業承継の40件を合わせて約100件を手掛けるなど、広島の企業連携を加速している。
 同社は、東京の大手コンサルティング会社を経験した若者2人が広島で創業し、現在は金融機関や国の経済行政出身者らスタッフ7人。地元に根差し、地元をよく知る利点を生かし、経営者に寄り添う特有の経営方針を貫く。
 代表の李志翔社長(39)は広島会計学院専門学校出身。20歳の時に国内最年少で税理士資格を取得し、話題になった。何事も「できるか、できないか」ではなく「するかしないか」を決断することが先決と言い切る。猛勉強で難関を突破。卒業後は山田コンサルティンググループ(東証一部上場)に入り、在籍15年でM&Aと事業承継を中心に約200件の受注案件をこなす。医療機器メーカーなどの幅広い業種でマッチングを経験できたことが、独立を決断するときの大きな原動力になったようだ。
 共同創業者の土井一真常務(30)は18歳の時に突発的な病気を患い、大学受験に失敗したが、21歳で公認会計士試験に合格。東京のベンチャー企業などを経て山田コンサルティンググループに転職するやいなや広島支店の立ち上げに携わり、当時は広島支店長だった李社長と出会う。そして会社設立の誘いを受けたとき「優秀な人材は多いが、信頼できる人は少ない」と思えたことが、決断する一番の根拠だったと明かす。
 考え方はシンプル。精魂を込めて会社を守り、事業発展に生涯を懸ける企業経営者に伴走し、少しでも役立つことができれば本望と立ち上がった。目標はでかい。
「M&Aは事業の継続や成長の手段です。既存事業の強化や新規市場への参入などを促すM&Aによって企業価値を高め、さらに継続的に事業の成長をサポートできる態勢で臨むことが、わが社の基本的な考え方。M&Aなどを通じて広島で100億円企業を100社以上、1000億円企業を10社以上つくる目標を立てた。そして上場を成し遂げる企業のサポートに携わることができれば、地域活性化に果たす経済効果は大きい」
 事業再生や税務相談、会計監査などの専門家グループも形成する。徹底して経営者の悩みに寄り添う。売り手と買い手の事業内容や経営方針を理解し、企業を深く知ることで互いに相乗効果を発揮できるマッチングがかなう。何より〝互いの尊重・信頼〟が事業発展の勘所という。
 同社が手掛けたM&Aや事業承継の事例などを交え、成約の秘訣などを次号で。

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