広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2021年6月10日号
創業以来の危機

広島空港の国際線は全便欠航になり、2020年度の搭乗者はゼロ。一方で、国内線は前年比約72%減の約73万人にまで急降下し、1993年の開港以来で最低だった。観光客が激減し、緊急事態宣言で日常の移動も自粛ムードが広がり、公共交通を取り巻く環境は一段と厳しい。
 広島電鉄(中区)は2021年3月期連結決算で約33億円の赤字を出した。赤字額は連結決算になった1977年以降で最大になり、今期も7億円近くの赤字を見込む。
 「創業以来の危機」とし、昨年5月に公表した「広電グループ経営総合3カ年計画」の見直しを行った。固定費の圧縮や業務効率化など既存事業の「変革」と合わせ、新たな事業機会への「挑戦」という二つの主題を打ち出す。よほど打撃が大きかったのだろう。椋田昌夫社長は、
「多くの産業でコロナ禍を変革の機会に捉えている。公共交通もその渦中だが、さらに人口減と高齢化という、ゆるがせにできない大きな難問が立ちはだかっている。既存の路線をひたすら走り続けるだけでは、どんどん乗客が減っていく。ヒントがあった。2012年に呉市交通局のバス事業を継承。高齢者にとって乗降地の分かりづらさや車内転倒などの事故が怖いというイメージがあり、これを徹底的に改善した。安心して外出できるようになったと感謝の言葉を頂き、利用者数が増加に転じた。今後さらに若い人が減り、高齢者が増える。安全はもとより、こちらから乗車機会を創り出す工夫がいかに大事か、痛感した。全ての人が楽しく、あちこちを巡る街づくりこそ、公共交通の原点にあるのではないか」
 さっそく動いた。14年から中区東千田町の広島大学本部跡地の再開発事業に参画。20年4月の分譲マンション完成で各種施設の整備に一区切りがつき、にぎわいを生む。15年にはグループ会社が住宅団地「西風新都グリーンフォートそらの」を造成し、バス路線再編で住民が市内外へアクセスしやすい環境を整えた。団地内に商業施設ジ・アウトレット広島を誘致し、交流人口の拡大にも成果を挙げる。今後、都心部の車庫用地などの有効活用策も検討し、経営3カ年計画に反映させた。
「広島に人が集積、回遊する仕組みづくりに挑戦する。4月に発足した広島都心会議の会長を引き受けさせていただいた。旧市民球場跡地や広島城、サッカースタジアム整備など大きな動きがあり、エリア全体の価値や魅力を高めていく使命がある。多くの人を呼び込むための空の玄関口の機能も拡充し、AIオンデマンド交通の導入などで空港アクセスの改善を図りたい」
 18年からの保育事業や検討中の介護支援事業などの「暮らしを支えるビジネス」も掲げ、イベントや大規模会議、文化観光施設と連携し、高齢者を含めた移動機会の創出を目指す。併せてDX(デジタル変革)で業務の仕組みを抜本的に改め、採算性を確保。AIオンデマンド交通を五日市湾岸地区で導入済みのほか、自動運転の実証実験も検討。将来は路面電車に信号自動化や集中指令を採用し、管理コストの削減を図る。
 「変革」と「挑戦」は事業存続の永遠の命題。被爆後すぐに電車を走らせた心意気がいまも息づく。

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