広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2021年6月17日号
都市再生と西国街道

都市再生緊急整備地区指定を受け、老朽化した建物建て替えを含め、広島市の真ん中で再開発構想が次々に持ち上がってきた。市は、広島駅周辺地区と紙屋町・八丁堀地区を東西の核とし、相互に刺激し合う「楕円形の都市づくり」を進めている。面的な開発に加え、歴史と未来をつなぐ時間軸の発想も入れて奥行きのある街の実現へ、いまこそ正念場ではなかろうか。
 中区にある仏壇通りの店主や有識者らでつくる市民団体「まちなか西国街道推進協議会」(山本一隆会長)がまちづくり功労者として、国土交通大臣表彰を受けた。江戸時代に京都と太宰府をつなぐ西国街道(近世の山陽道)は、現在の猿猴橋から京橋、仏壇通り、本通、元安橋を通り、広島城の城下町を東西に貫く。広島城絵屏風などに当時の風景が描かれており、沿道には商家が建ち並ぶ、最もにぎわいのある通りとして栄えた。
 刀を差した武士、荷物を馬に乗せて運ぶ商人、立ち話をする町人、ずらりと軒を並べた店の中には職人、と現在と変わらない生き生きとした広島の暮らしを目の当たりにできる(広島仏壇通り活性化委員会の承諾を得て市作成のパンフレットより)と往時のにぎわいを伝えている。
 こうしたまちなかの歴史を可視化できないか。2016年立ち上げた準備会を重ね、18年3月発足した推進協議会の大きな目的でもあった。「楕円形都市づくり」の主軸として西国街道を位置付け、駅前大橋東詰めの歩道に西国街道案内板を寄贈したほか、市下水道局に働きかけ、西国街道をかたどったマンホールを街道沿いに配置。国交省の夢街道ルネサンス認定など、地域住民と協力しながら活動を進めてきた。一方で、西国街道の歴史を子どもたちに伝えようと広島東、広島安芸ロータリークラブと共催で小学校を対象に出前授業を開く。
 19年秋には浅野藩入城400年記念事業として、華やかな時代絵巻を再現する広島江戸時代行列を開催。徳川家康の50回忌から50年ごと、神輿(みこし)行列が東照宮から猿猴橋を経て西国街道を通り廣瀬神社まで巡行された「通りご祭礼」に倣って、広島城入城行列も併せて実施した。多くの市民が押しかけた。推進協議会の山本会長は、
「伝統的な祭りの継承のため今後も5〜10年に一度の間隔で続けていきたい。地域の文化やイベントなどのソフトを伝えていくことが街づくりにとって大切だと思う」
 街道に息づく伝統や歴史と現代をつなぐ商品化にも乗り出した。今春に街道沿いの4蔵の本州一(梅田酒造場)、蓬莱鶴(原本店)、御幸(小泉本店)、八幡川(八幡川酒造)の酒を「廣島醸酒《西國街道》四天王蔵」と銘打ち、ブランドオリジナルの統一ラベルで商品化。売れ行きは上々という。創業100年以上の仏壇製造販売の高山清は伝統工芸品の広島仏壇の漆塗り技術を生かし、家庭でも楽しめるデザイン性に優れた漆器を用途に応じて仕上げた。ほかにも商品化の動きがある。
 国土交通大臣表彰の功績概要に、「原爆により失われた街の歴史を後世に伝えるとともに、西国街道の歴史と文化を生かした新たなにぎわいづくりを推進」とある。ゆくゆくは3D画像によって西国街道を復活してもらいたい。

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