広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2021年7月15日号
上場の夢かなう

マットレス、ベッドフレームの製造販売を主力に、リビングソファや寝装品などを扱うドリームベッド(西区己斐本町)が6月23日、東京証券取引所第2部に新規上場を果たした。県内で上場した企業は52社、広島市内では25社になった。
 まさに夢がかなった。2017年2月24日亡くなった前社長の渡辺博之氏の遺志を受け継ぎ、創業70周年の節目に当たる2020年を目途に上場を目指していた。国内のベッドメーカーではフランスベッド、パラマウントベッドに次いで、3社目になる。小出克己社長は、
「1950年の創業以来、品質に対する統一した考え方が根付いており、われわれが造る製品に対する自信と誇りが根底にある。たゆむことなく研究、開発を重ね、製造現場では改善、改革に懸命に取り組んできた。マットレスはコイル(鋼線)の太さ、形、配列で寝心地が決まる。当社は線径の異なるコイルを1台の機械で作り、任意に配列する技術の特許を持つ。一人一人の寝心地に対応できる素晴らしい技術だと自負している」
 これからも優れた品質の製品を造り続けるという創業来の方針がぶれることはないと言い切る。
 戦後間もなく、寡婦や戦災孤児の救済へ創業者の渡邊禮市夫妻が私財を投げ打ち、現在の中区基町で授産場を経営した後、米駐留軍の払い下げ物品を受け、ベッドの修理販売を手掛けるようになった。1957年に禮市氏が広島ベッド商会を立ち上げ、その年の夏、製造部門を切り離し、ドリームベッドを現在地に設立した。60年代後半には安芸高田市にマットレスなどを製造する八千代工場を完成。現在のベッドメーカーとしての礎を築いた。製造部門と販売部門を分離したほか、部門別に子会社を相次いで設立。しかし不況下で経営効率化を優先し、2002、03年にかけて、11社あったグループ会社を合併・統合。現在のドリームベッド1社に集約した。小出社長は03年に広島銀行から出向し、同行退職後、渡辺博之社長の逝去にともない専務から現職に就いた。
「一般的に同族経営には優れた点も多くあるが、ガバナンスが機能しなくなった時に、社内外から意見が入りにくく、受け入れにくくなるという危険もある。経営の風通しをよくするというのが、どの企業にとっても大事なことではなかろうか。当社では経営の柱でもある、『いいものを作ろう』というものづくりの精神が大事に守られてきたことで、品質やブランドの評価は高い。上場で得た資金は八千代の新工場建設に投入し、徹底的にものづくりの力を磨く。さらにブランド力を向上させ、ウェブ、SNSやテレビ広告などによって認知度を高める。全国3カ所のショールームにご来場いただき商品に触れてもらう、知ってもらうことで、必ず評価してもらえると確信している」
 20年3月期売上高は2期連続で大台の100億円を突破した。21年3月期はコロナ禍の影響を受け、商業施設向けの売り上げが減少。89億円で減収に転じた。しかし、今期はおおむね順調という。
「ものづくりに慢心があってはならない。創業の精神を大切にし、先輩から後輩へ繰り返し伝えていかなければならない」

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