世界的な脱炭素の潮流を受け、2050年までに温室効果ガスをゼロにするカーボンニュートラルへ向けた取り組みが広がり、自動車業界はEVシフトを加速。給油所の経営環境が厳しさを増す中、綜合エナジー(安芸郡府中町茂陰)は昨年2月、全国初のエネルギー自立型給油所として八本松SSを開業した。
環境省のレジリエンス強化型ZEB支援事業の補助金を活用して同SSを改修。関連メーカーと共同で電源切り替え自動制御システムの開発も進め、太陽光発電の電気を蓄電池に充電しながら利用し、不足分は中国電力から再生可能エネルギーで発電した電気で賄う。停電時などこれらの電源が確保できない際は非常用発電機が自動で稼働する。貯水槽も備え、災害時も通常営業が可能で、燃料の安定供給ができる防災型給油所の機能を備える。次いで同年12月に沼田SSも改修し、自立型2号店をオープン。
いち早く環境や災害対策を講じた給油所に着眼し、独自のアイデアを取り入れた給油所を運営する同社は13年3月開業したペガサス新大州橋SSを皮切りに、セブン-イレブンと複合型の災害対応型給油所を実現し、多店化に乗り出す。今年3月リニューアルした矢野ニュータウンSSなど市内中心に5店を展開。直営全9店は自家発電設備を備え、資源エネルギー庁の住民拠点SS認定を受ける。狩野一郎社長は、
「月1回、各店代表が集まって防災ミーティングを実施する一方、定期的に防災訓練も行う。近年、給油所はサービスステーション(SS)と呼ばれるようになったが、当社は数年前から〝強靭(きょうじん)なインフラステーション〟を合言葉に地域になくてはならない拠点づくりにまい進。車の動力源がどのように変わろうとも、地域のライフラインとして存在価値を高めていきたい」
目標は明確だ。ガソリン販売量よりも来店客数に主眼を置く経営も珍しい。一人でも多く〝入りやすいSS〟がインフラステーションへの入口という。24時間営業のコンビニや洗車サービスなどもその一環。新大州橋SSは1日当たりの洗車台数が全国のエネオス系列店で1位になったこともある。顧客志向をとことん考え、求められているものは何かと追求し続けた。全9店の平均顧客数は全国でもトップクラス。見事に時代の潮流を捉えた。
原油高騰などで石油元売り大手3社の22年3月期決算は過去最高益となったが、エネオスHDは6月、NECのEV用充電サービス事業を譲受。出光興産は給油所の「スマートよろずや」構想を打ち出し、脳ドックなどの拠点転換を試みる。コスモエネルギーHDも系列SSでEV充電サービスを始めた。
綜合エナジーの22年2月期売り上げは過去最高を更新し95億円超。同社の坂油槽所は年中無休で陸海輸送体制を敷く。一方で、LED照明導入の省エネ化支援でビジネスの輪を広げるなど地域に役立つ運営に徹する。
「東日本大震災や西日本土砂災害を経験した。いつでも誰でも入りやすいSS、インフラステーションであり続けるためにも全店エネルギー自立型にしていきたい」
リスクを革新の原動力とした辺りが勘所なのだろう。