広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2022年10月20日号
柔しく剛く

長引くコロナ禍が経営を直撃し、どう対応したのか、多くの教訓を残す。商いの在り方を見直して転機とした会社もある。宝飾・時計販売の新川(安佐南区相田)はグループ6店で独自のブランディングを展開し、これまでの殻を破る作戦に乗り出した。
 むろん顧客目線の原点は変わらない。どうすれば一番喜んでもらえるのか。顧客の憧れをカスタマイズできるセミオーダー式を採り入れた。工藤清恵社長は、
「ブランディングからデザイン、製品化を任せることで接客の最前線にいるスタッフのやる気が高まり、顧客層を広げていく」
 宝飾品のリフォームやリメイクの需要が増え始めていることに着眼し、その専門店も構想中だ。コロナ禍によって経営の視野を広げ、新たな発想へつなげたのだろう。
 時代の流れをつかむ感性に磨きをかけた。インスタなどSNSで海外も含め、さまざまなデザインのジュエリーを目の当たりにする若い人向けに、その憧れに限りなく近づくカスタマイズの技術、発想に目線を転じ、若いスタッフのモチベーションを大いに刺激した。みんなで店舗運営を盛り上げていく自信と勇気をつかんだ姿が何よりうれしいと言う。
 SPA(製造小売り)に力を入れている。水晶産地で宝石加工を地場産業とし国内唯一の公立ジュエリー専門学校のある山梨県甲府市の一流職人との出会いがあり、新たな挑戦を後押しする。
 工藤社長の実父、新川清次会長が創業し、業歴50年を超える間にグループ6店舗に成長。メーカー商品のほか、製造直販ブランド「NR」を看板商品に、催事や招待旅行などを通じて固定客を増やしてきた。
 主に60代以上の女性を顧客とし、地域に根付く宝飾店の地歩を築いたが、コロナ禍に危機感が募った。いま何をすべきか。社員に不安を与えてはいけない。現状を変えなければいけない。日夜考え続け新たな挑戦を決意した。 
 昨年夏、東広島市の西条本店の店長が40代へと若返ったのを機に、思い切って各店オリジナルのブランドをスタート。比較的に手薄だった20〜50代に照準を合わせたことが呼び水になり、次々グループ店へ波及した。
「ティファニーやブルガリといった揺るぎないブランドにかなうわけがない。当社のブランドづくりは顧客の要望をすくうことから始める。大手メーカーからの受注が減り苦境に立つ甲府市の宝石加工産業を維持し、職人さんの技術を守り育てる。そうして当社のブランドを育てる相乗効果に期待している」
 工藤社長もジュエリーデザイナーでオリジナルブランドを持つ。デザイン性の高い〝蒔絵(まきえ)ジュエリー〟を新たな市場に投入する構想も描く。
「加工技術が進歩し、蒔絵や螺鈿(らでん)をガラスの洋食器にも施すこともできる。コラボすることで日本の伝統技術が新たな魅力を放つジュエリーの市場を広めたい」
 海外市場も視野に入れる。各店では順次、オンラインショップとインスタにアップする態勢を敷く。
 「柔(やさ)しく剛(つよ)く」スピリッツを貫く。柔軟な心とやり抜く意志。出身校の安田女子大学建学の精神をうちに秘める。

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