広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2022年10月27日号
西国街道の夢

西国(さいごく)街道。古代から中世まで京都と太宰府をつなぐ山陽道(約650キロ)として宿場町や一里塚などが整備されていた。江戸時代は参勤交代をはじめ、万人が往来したという。広島市の資料に逸話がある。将軍徳川秀忠は福島正則を転封した後、和歌山藩主の浅野長晟(ながあきら)を広島藩42万石へ転封。奥座敷に長晟を呼び、
「広島は中国の要ともいうべき重要な地だけに、めったな者に与えるわけにはいかないが、その点お前ならば安心して任せることができる」
 九州へつなぐ重要な幹線だったことをうかがわせる。広島では現在の猿猴橋から京橋を抜け、仏壇通り、本通、元安橋を通り、城下町を東西に貫く。
 広島城絵屏風(びょうぶ)に当時の風景を描く。沿道に商家が建ち並び、刀を差した武士、荷物を馬に乗せて運ぶ商人、立ち話をする町人、職人らの生き生きとした暮らし、往時のにぎわいを伝える。
 同エリアと重なり、市は広島駅周辺地区と紙屋町・八丁堀地区を東西の核とし、相互に刺激し合う「楕円形の都市づくり」構想を打ち出す。これに呼応し、都心の商店街や町内会、学識者らでつくる市民団体「まちなか西国街道推進協議会」(山本一隆会長=広島市文化協会会長)が2018年3月に発足。高層ビルが建ち並ぶ面的な都市開発に加え、歴史といま、将来をつなぐ時間軸の発想を入れる。文化や産業などの地域資源を掘り起こして人と人を結ぶにぎわいと回遊を目指し、特産品開発や、まちづくり提案などに取り組んできた。
 まちなか西国街道の共通ロゴマーク、マップを作成し、デザイン化したマンホールや標識設置につなげた。19年秋には浅野藩入城400年事業として、華やかな時代絵巻を再現する広島江戸時代行列を開催。徳川家康の50回忌から50年ごと、神輿(みこし)行列が東照宮から猿猴橋を経て西国街道を通り廣瀬神社まで巡行された「通りご祭礼」に倣って、広島城入城行列も併せて実施。このほか沿道にある小学校を中心に郷土の歴史を学ぶ「出前授業」を重ねた。国交省の夢街道ルネサンス認定を受け、昨年はまちづくり功労者の大臣表彰を受ける。
 さらに活動を広げ、深化させていく計画だ。街道沿いで活動する各団体が集まる第9回交流会を12月12日、中区で初めて開く。第1回竹原市から始まり東広島市、海田町、市内各区を巡回して年1回、今回は5年ぶり。
 これに先立ち、5月に推進協議会ネットワーク部会を設置。城下町時代から明治、大正、昭和初期までの歴史、文化などを町内ごとに紹介する「まちなか西国諸町案内記(仮称)」作成に着手する。城下町として栄え、明治維新後の近代化、被爆による惨劇から復興までの街道を縦軸に各町の歴史をたどる試み。推進協議会が協力し、帝京大学の吉岡孝昭教授の研究室は11月12日まで、同大キャンパスで「せとうち西国街道を歩く」展を開く。産学官連携プロジエクトでゼミ生が西国街道をイメージしたウェブ、VR空間を発表、展示。デジタル技術を駆使して世界をつなぐ。
 来年5月にG7広島サミットがある。広島の歴史と諸町案内記を国内外へ発信する価値は大きく、サミット後の取り組みにも期待したい。

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