広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2022年11月10日号
先輩が切り開く

残暑厳しい9月中旬。東京都の離島、神津(こうず)島から高校生18人が修学旅行で初めて安芸太田町を訪れた。1泊2日の日程。3、4人に分かれて五つの家庭に民泊。初めは互いに少々緊張気味だったが、畑作業や稲刈りなどに汗を流すうち、いっぺんに打ち解け若い歓声がはじけた。
 2008年度から広島湾ベイエリア・海生都市圏研究協議会(池田晃治会長)が粘り強く誘致活動を展開してきた民泊主体の体験型修学旅行。コロナ禍で約2年半中止していたが、同町が先陣を切り一部再開。感染対策を講じ、コロナ下での実施を検証した。
 広島〜山口県の9市6町の自治体や商工会議所、商工会などが行政エリアを超えて官民一体の組織をつくり、誘致活動も二人三脚。旅行社や学校からのオファーは途切れることがない。23年度の予約状況は10月1日現在で民泊50校6300人、屋外での選択別体験プログラム10校1486人に上る。民泊事業の受入母体として周防大島町(山口県)、江田島市、大崎上島町、安芸太田町、北広島町、福山市沼隈・内海町、庄原市、佐伯区湯来町の8地域協議会が実働する。トップには各自治体の首長クラスが就く。これが安全安心な受け入れ態勢の源になり、突発的な事柄にも素早く対応できる。
 修学旅行生一人当たり消費額1万3000円で試算すると、過去最高だった19年度116校1万5093人で約2億円。体験料の75%が民泊家庭やインストラクターに分配される仕組みで、同事業の継続につなげる。受入2万人が視野に入った矢先、コロナ禍に遭遇。研究協議会設立20年を機に辞任すると決めていた初代運営委員長の中村成朗さん(中村角会長)からバトンを受け、20年7月に就いた佐伯正道運営委員長(広島朝日広告社会長)は、
「当時、中村委員長に民泊の離村式に呼び出されたのが発端。たったの一泊なのに涙を流して別れを惜しむ生徒の姿を見て正直、驚いた。中村さんは協議会設立に際して各市町のトップを訪問し、熱心に協力を求めた。決して労を惜しむことなく毎年、足しげく旅行社などを訪れて民泊による体験型修学旅行の価値を説いた。ありのままの自然や地元の人との温かい触れ合い、日頃できない体験が、修学旅行生の感動を呼ぶのでしょう。高齢化にコロナ禍が追い打ちをかけ、いまは民泊家庭の確保が大きな課題になっている。安芸太田町は少人数の受け入れだったが手応えを実証できた。先輩が切り開いてきた道筋の先に、さらに何をなすべきか、何ができるか。工夫を重ねながら将来への可能性を探っていきたい」
 民泊の担い手は、わが孫とも年齢の近い若者と接する楽しさややりがいとともに、教育と地域振興に役立つボランティアの意識が強い。民泊を終え、自宅に帰っても〝第二の故郷〟との間で文通を続ける生徒も多いという。
 今秋ようやく、平和公園などに修学旅行の大型バスが列をなす光景が戻ってきた。民泊によって平和学習とセットで県内泊につながる契機になり、卒業後いつかまた、広島を訪れてくれるよう願う。
 来年5月に「G7広島サミット」がある。国内外に広島の良さを売り込む大きなチャンスを逃す手はない。

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