広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2022年12月8日号
マツダの電動化戦略

製造業の世界的な半導体部品不足やコロナ禍によるサプライチェーンの乱れを受け、地域で開発し調達する「エコシステム」構築の機運が高まっている。電動化に待ったなしの自動車業界。将来、車載用電池の争奪戦に発展しかねない。マツダは独自の電動化戦略を描き、手を打った。
 新エネルギー・産業技術総合開発機構のグリーンイノベーション基金事業(実施期間2022〜30年度)に採択され、次世代高容量高入出力リチウムイオン電池の自社開発に乗り出す。30年時点の世界販売に占めるEV(電気自動車)比率はこれまで25%と想定していたが、40%に引き上げる。早速、8月には地元の部品メーカーなどと共同出資で電動駆動ユニットの開発会社を設立。基幹部品のシリコンカーバイドパワー半導体を含むインバーターも共同開発する。広島から独自性の強いEVを世に出す。丸本明社長は11月22日の記者会見でこれらの方針を打ち出し、決意を示した。
「グローバリゼーション崩壊の兆候が明らかになり、多極化やブロック経済へと枠組みが変わりつつある。経済安全保障上の摩擦や分断と対立の顕在化など、経営環境は不透明。こうした中でも各国の電動化政策や環境規制を踏まえると、EV比率を高めていく必要がある。変化に柔軟に応じられるよう、三つのフェーズに分け、パートナー企業と共に電動化を加速する」
 EV時代への移行期間には内燃機関をはじめ補助モーター含む電動化技術、代替燃料をさまざまに組み合わせ、地域の電源事情に応じて適材適所で提供していく。第1フェーズはこのマルチ展開を中心に据え、第2フェーズで新しいハイブリッドシステムを導入する。電動化が先行する中国市場でEV専用車を投入し、それからEVの世界展開を開始。最終段階でEV専用車の本格導入を進め、電池生産への投資などをもくろむ。
 一方で、ガソリンエンジンなど内燃機関の製造に携わる企業はどうするのか。中国地方で内燃機関の製造従事者は約1万人に上り、無視できない。マツダは電動駆動ユニット関連の並行生産と段階的な業態転換を促す方針という。その第一歩として8月にオンド、広島アルミニウム工業、ヒロテックなどと三つの共同出資会社を設立。電動化計画の第2〜3フェーズに開発を完了させ、段階的に内燃機関専用の部品メーカーの生産品目移行が進むと予想する。
「半導体と物流のひっ迫によって、原価低減やサプライチェーンの在り方も考え直さざるを得ない。材料調達からユーザーに商品を届けるまでの全工程で物がよどみなく流れるよう、スピードが最大化される『全体最適の工程』を実現する。部品を早く取り寄せるために、協力会社で連なる深い階層を浅くしなければならない。バリューチェーンとサプライチェーン全体に視野を広げ、ムダ・ムラ・ムリを徹底的に取り除く」
 他メーカーも電動化の自社開発を進める中、半導体部品の安定調達が鍵を握る。広島の公的機関が半導体関連の産業振興協議会やコンソーシアムを結成する動きもあり、新たな半導体企業を創出する可能性を秘める。ものづくりを得意とする広島産業にとってチャンス到来である。

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