広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2022年12月15日号
微差が大差

9月にリニューアルした中区本通の「ひろしま夢ぷらざ」が好調に滑り出した。1999年3月に開業以来の大規模改装で集客力を高め、若い人や観光客などの新たな客層を開拓した。近年、年間売上高は3億5000万円内外で推移し、産直品を扱う量販店などに押され気味だったが、来店客が復活。いまはピークの5億円超を視野に入れる。中山間や島しょ部ほか、県全域の産品や地域情報の発信に知恵を絞り、思い切った売り場改善を実施。のぞいてみたくなる入りやすさ、ざっと店内を見渡せる開放感がある。
 出展事業者の商品開発や販路拡大に寄り添いながら産地と街をつなぐ実践的な仕掛けにも工夫を凝らす。高本統夫店長(61)は、
「広島は海や山の自然の恵みが充実している。大消費地に向け、山海の幸や特産品を売り込む効果的な作戦を練り、官民一体のオール広島で取り組む一端を担いたい」
 広島修道大学商学部経営学科を卒業後、広島そごうに入社。94年の食品名店課係長を皮切りに食品畑一筋にバイヤーとして目利きの力を養った。2020年にそごう・西武本部で品質管理担当として食品衛生・表示を指導。21年1月に定年を迎えて再雇用を選択するさなか、経験を買われ、今年6月に店長に就く。百貨店時代は〝全国ブランドを広島で売る〟〝東京や大阪の人気食品を広島で味わう〟といった販売戦略を展開していた。
「百貨店がその役割を果たし必要とされた全盛期は、例えば礼服一つ、同じ黒でもその違いが評価される時代。ファストファッションやネット販売が台頭し、所得が上がらない中で消費の構造が様変わりした。さらに長引くコロナ禍や物価高騰の影響が市場拡大を阻む。しかし地域の生産者や加工メーカーの良いものを一生懸命につくろうという気持ちを絶やしてはならない。本物は必ず生き残る」
 自らの体験で得た確信なのだろう。百貨店勤務で培った知見や幅広いネットワークなどを生かし、集客できる店づくりのポイントや目を引く売り場、買いたくなる売り場づくりに力を注ぐ。一方で出展者には〝良いもの、おいしいものをつくってさえいればいい〟という考えを改め、既存商品のブラッシュアップや食品表示の徹底を求める。
「本気で大消費地に打って出るにはパッケージや表示をないがしろにできない。微差が大差になる。広島サミットを控え、インバウンドも次第に増えてくる。逃す手はない。海外へ打って出る気概で商品開発に挑戦する第一歩を踏み出してしてほしい」
 夢ぷらざは都会と産地が交差するプラットホーム。生産者にとって踏み台の役割も担う。第1弾で生カキを扱うマルヒロ水産(中区江波本町)の燻製オイル漬けカキの缶詰を商品化。保存料未使用で賞味期限を延ばした。2、3弾も仕込み中。ショールームや商談の場としても有効活用を図り、土産店や量販店などに売り込む〝BtoB〟にも目配りを欠かさない。地域を元気にするのが一番の目的だ。
 古里の景色に癒やされる。その心を宿し、街中で心身をリフレッシュさせてくれる夢ぷらざの価値は大きい。むろんG7広島サミットへの備えにも抜かりがない。

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