広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2023年11月2日号
固定概念を壊す

広島の街が大きく変貌しようとする時、ことごとくチャンスをものにした。古いビルを壊し、更地に新しいビルが建つ。街の光景が一変する。
 解体工事業で地元トップの桑原組(西区己斐本町)は半世紀以上にわたり、広島の主要ビル新築に伴う解体工事を施工。古くなった旧広島市民球場、広島朝日会館、広島アンデルセン、広島銀行本店、NHK広島放送センターや、NTTクレド、広島駅前などの再開発関連も手掛け、解体実績は累計1万棟を超える。
 桑原明夫社長は、
「街づくりに終わりがないことを体感してきた。使命を終えた建物が解体される時、いくばくかの感慨はあるが、素晴らしい新ビル建設への期待が大きい。人も街も緩やかに循環する仕組みをつくる。その一端を担えるよう経営ビジョンを定めている」
 先を見て構想を描く。固定概念を壊し、これはと思ったら果敢に挑戦してきた。圧倒的な施工実績を重ねて自然と身に付いた感覚なのだろう。いまは無印良品の家づくり、分譲・賃貸事業、空き家再生サービスなどへ事業領域を広げ、昨年9月設立した持ち株会社のテラスホールディングス(同住所)がグループ事業を統括。今年9月末に広島駅南口エリアの19階建て再開発オフィスビル・広島JPビルディング2階に新事業のフードホール「GRANDGATE(グランゲート) HIROSHIMA」をオープンした。都会的で開放的な新しい空間に多くの人が集まり、にぎわう。
 飲食事業に踏み切った経緯について、
「旧広島東郵便局の解体工事を施工した縁があり、新しい広島JPビルで何かできないかと考えた。7年半前、ビジネスラウンジを同時に提案した経緯から企画を受けてもらった。コンセプトから内装工事まで総出で知恵を絞り、イメージ通りに仕上がった。みんなの士気が高まったのが大きい。これまで出会う機会のなかった食品関係の方々とつながりもできた。ラウンジ機能だけでなく、広島および瀬戸内の地域資源が交差、発信し、新しいカルチャーが生まれる場所、機能を発揮していきたい」
 早速、グランゲートで10月下旬から1週間、市の「ザ・広島ブランド」認定商品約20社の一押しを限定販売。30日に開いた意見交換会の出会いの場を通じて認定商品ブランドの魅力アップを後押し。地域に根差す、街づくりの考え方を実践する。
 リクルート勤務を経て、住友3M社のフィルム代理店として実績を上げ、2000年に親族の要請を受けて解体事業を継承。社内改革を決行する一方、独自のビジネスモデル「ワンストップ土地更地化」事業を起点に、新たな成長戦略を描く。毎朝、新聞5紙に目を通すという。
「柱となる建設業界は景気の波を受ける。ここを安定させる手はないか。古い建物の再生から快適な都市、住空間を創造し、みんなが集う場を生み出す。何のための経営なのか、根本に目を向けた。グランゲートは、さまざまなジャンルの人の出会いや対話から新しい発想、元気が飛び出す場所になればうれしい」
 リノベーション分野のほか商業施設に向けた企画提案など立ち止まることがない。
 ことづくりから始まるビジネスのループ。新事業には、なるほどと膝を打つものもあれば意外なものもある。社会課題の数だけ、次々と発想が湧き上がるのだろう。

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