広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2023年11月9日号
親子でJC理事長

会社の規模は決して大きくないが地域に根差し、広島青年会議所(JC)の1992年度理事長のほか、2013〜16年度の広島経済同友会代表幹事など経済界の要職を数多く務めた森信建設社長の森信秀樹さん(70)の長男、秀一郎さん(39)が来年度の広島JC理事長に就く。
 秀樹さんは、いまもさまざまな会議に参加し、物おじすることなく持論を述べる。時に耳が痛くなるような核心を突くが誰も嫌な顔はしない。自分の言葉で話す実直な人柄と地元を愛する心が自然と伝わるのだろう。
 秀一郎さんは広島大学付属中・高を卒業後、東京農業大学と同大大学院で造園・景観を専攻。早稲田大学芸術学校で建築も学び、ゼネコンに入社。営業のほか、リノベーション事業の立ち上げを担当した。1年ほど都市銀行へ出向し、不動産有効活用などのコンサルを経験。秀樹さんが経済同友会の代表幹事に就いた年に28歳で同社へ入り、父の留守を預かった。17年から常務。16年にJC入会。専務理事や副理事長を歴任した。
 今から約20年後の被爆100周年に50代を迎える現JCメンバーが地域経済のリーダーとなり、多方面で意見を発信できるよう、自由闊達な議論を重ねていく方針だ。一体どんな街を望むのか。広島のあるべき姿を描き、実現させたいと話す。
「父は生き残りを懸けて公共工事から民間工事に受注をシフトさせるとともに、人脈を大切にしてきた。もちろん経営戦略の一手だろうが、まちづくりに関わりたいという思いが強く感じられた。私が子どもの頃、しばしば家を空ける罪滅ぼしだったのか、土産を手にした父の姿やたまの家族旅行が記憶に残る。いま私も同じ境遇にどっぷりと漬かり、父と目線が似てきたことに気付く。子どもたちが広島で暮らし続けたいと思える社会の実現に向かって行動することがわれわれの使命。打ち込める環境をつくってくれた父に感謝している」
 血液型はB型だが仕事はA型のようにきっちり、プライベートはB型とよく言われると明かす。JCの催しを特定の週に集めたムーヴメント・ウイークを初企画し、成功へ意欲満々。その辺りは親子そろって一本気である。
 秀樹さんは、JCが人生を変えたと振り返る。友人の勧めでJCに入り、同世代で膝を突き合わせて広島の未来について語り、絆が生まれた。債務超過に陥り経営の悩みを相談した時、そのアドバイスに助けられたこともあったという。JC在籍中はメンバーに仕事の営業を直接しないよう心掛けたが、卒業後にその人脈が頼りになった。
 仲人を買って出てくれた先輩に出した唯一の条件は「JC活動に理解のある女性」だった。三次JC創設者で三次商工会議所会頭を務めた巴産業の吉中恒夫社長(故)の次女、信子さんと27歳の時に結婚した。ちょうど1級建築士試験に合格し、所帯を持つ自信が湧いていた。まさにJC一家。自分の生き方を通す、わがままを支えてくれたと神妙である。
「私の理事長時代は世界会議の誘致活動で賛否が二分された。誠心誠意の説明を尽くして理解を得ることができた。札幌に敗れはしたが、その過程で多くの仲間ができた。親子で話すときは自分の経験や事例を伝えるだけにとどめ、本人の判断を見守っている」
 うれしかったのだろう。ふと表情がほころぶ。

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