広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2024年1月12日号
天命を楽しむ

儲かるなら何でもやる。本当かと思うほど悪質な手口で企業の不祥事が相次いだ。ビッグモーターの自動車保険の保険金不正請求は、靴下に入れたゴルフボールで車体をたたき、ドライバーで傷つけるという卑劣なやり方が露見した。こともあろうに謝罪会見で経営トップは「ゴルフを愛する人に対する冒涜です」と語り、世間を唖然とさせた。
 ダイハツ工業は最も大事な車の安全性を軽視し、衝突試験などで認証不正が発覚。生産停止に追い込まれた。こうした不祥事の裏側に経営者の身勝手や業績ファーストの考えが透けて見える。
 一体何のための経営か。社員の幸せのためならと、骨身を削る中小企業経営者は多い。儲かるなら何でもやるという考え方とは遙かにかけ離れる。とんだ勘違いから経営を危機に追い込んだ責任をとるすべなどない。
 政界も混沌としてきた。G7広島サミットで岸田政権の支持率が上向き、長期政権さえ期待された。だが自民党派閥の政治資金問題を巡る事件で支持率が急降下。自民党におごりや油断はなかったか。まさに天網恢々疎にしてもらさず。国、人を導く大役を背負った政財界リーダーの謙虚さ、自ら襟を正す心構えはどこにいったのだろうか。
 これで満足だと言う時は衰える時である。天命を楽しんで生きることが処世上の第一要件である。日本資本主義の父と称された渋沢栄一の言葉という。昨年は政界、経済界に多くの教訓を残した。
 さて、新年はどうか。ひろぎんホールディングスの経済産業調査グループ長の河野晋さんは、
「今後も緩やかな回復基調をたどると予想している。物価上昇率を上回る賃上げを実現できるか、大きなポイントになりそうだ。人手不足はますます深刻で、賃上げを促す要因になると思う。コロナ禍を脱して上昇していた消費マインドは、7月をピークに物価高などにぶつかって低下に転じていたが、賃上げで家計が豊かになり、消費を促し、企業収益が上向く。こうした好循環に乗せることができるのか、どうか。反対に物価上昇が続き、賃上げが抑えられると消費が下振れする可能性もある」
 同経済産業調査部のアンケート調査では、2024年度に「賃上げを実施する方向」と回答した企業が8割近くを占め、賃上げの機運は維持されている。
 大企業を中心とした業績は好調で、企業の内部留保は過去最高水準に達している。これらを背景に設備投資意欲は強く、競争力強化に加え、生産性向上に向けた合理化、省力化などの設備投資は底堅く推移するとみられる。
 広島県の輸出は円安の進行と単価改善などにより、コロナ禍前の19年を大きく上回って推移。米国向けは半導体不足を解消した自動車が上向く中で底堅い。しかし世界経済の減速と緩やかな円高推移が見込まれており、全体では横ばいを予測。
 やはり広島サミットの効果は大きい。行列ができる平和記念資料館の入館者、宮島の来島者共にコロナ禍前の水準を上回り、宿泊者数もインバウンドを中心に前年比2桁の増加が続く。街中では外国人観光客が目立つ。サッカースタジアムの開業などで観光関連はにぎわいそうだ。だが油断はできない。人手不足をどうやって解消するのか、多くの難問を抱える。天命を楽しんで生きる覚悟こそ先決か。

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