広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2024年5月9日号
寝ても覚めても

突然けたたましくテレビ、スマホ、町内放送のアラームが鳴り響き、間髪入れずグラグラときた。4月17日深夜、愛媛・高知県で起きた地震は震度6弱。広島県内では震度3、4だったというが、かなり揺れた。日本列島は有史以来、絶え間なく地震が発生しており、まるで地震の上で暮らしているようだ。大きな地震がいつ、どこで発生するのか、不安が募る。
 地震に強く、強固という理由から、さまざまな構造物に使われている鉄筋コンクリートが長年の風雨にさらされて劣化し、もろくなっているという。高度経済成長期を支えた高速道、トンネル、橋、ダムといった公共インフラや都市部のマンション、ビルなどの全てにコンクリートが使用されており、内部にできた微細なひび割れや空隙(くうげき)をどう補修・補強するのか、大きな問題になっている。
 革新的な技術を開発し、コンクリート構造物の内部から健全にする特許工法「IPH工法」(内圧充填接合補強)を実用化したSGエンジニアリング(西区草津東)がいま、全国の自治体などから注目されている。かつて化学工業品や金属部品などの大手メーカーで接着剤の流通・商品開発に携わっていたが、広島に戻り1988年に同社を設立した加川順一社長(77)は、
「コンクリートは老朽化すると欠損や浮き、ひび割れから水が侵入し内部まで劣化。水は気化して外に出ようと移動して鉄筋にぶつかり、その辺りを空洞化させる。特に鉄筋周囲がもろくなっている可能性が高い。地震に遭って建物が壊れ、暮らしが壊れ、命が失われてからでは遅い。既存のコンクリート構造物を表面だけでなく、内部から回復させて再生し、延命させるにはどうすればよいのか。鉄筋とコンクリートを樹脂で一体化させる補修工法の実用化にのめり込んだ」
 これまでは、ひび割れ部分に直接樹脂を押し込む注入工法で補修されていた。しかし空気が邪魔をして樹脂が表面に留まり内部まで届かない。ひび割れ内の空気を抜いて真空状態にする方法がないか、専門家と相談しながら10年近く、大学などと実証実験を重ねた。そうして空気と樹脂を置き換える「IPH工法」の完成にたどり着く。寝ても覚めても考え、夢で見たアイデアは素早く書き留める。関連論文は40以上。次第に問い合わせが入るようになり、歴史的建造物や文化財などの施工実績も増えてきた。
 2012年に特許取得。専門用具で微細なひびへ樹脂を高密度充填し、接着から「接合」へ発展させた。表面補修後の注入で躯体部と補修部を一体化させて再剥落を防ぐ。鉄筋周りを高密度にして水や空気、ガスが触れないように密閉すれば錆びが出ないことがはっきりしている。施工中のコンクリート廃棄物を減らし、施工費や工期も抑えられる。14年に(社)IPH工法協会を設立。会員は北海道〜沖縄に160社に上り、工法の技能士約1300人体制で全国をカバーする態勢を整えた。
 今期は過去最高の売上高8億6000万円を見込む。工事を直接請ければ規模は拡大するが、事業の目的は人の命を守り、地域や暮らしを守ることが最優先と言い切る。
「ヨーロッパでは建物を長く大切に使う文化がある。日本は古くなると壊し、災害に遭うたびに新しく建て替えてきた。資源は有限で、こうした考えはもはや通用しない」
 次号へ続く。

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