米国第一主義を標ぼうし、各国とディール(取引)を推し進めるとみられるトランプ政権が一体どこまで政策を実行するのか。2025年の世界経済の最大の波乱要因として注意をしておく必要があるという。ひろぎんホールディングスの経済産業調査グループ長の河野晋さんに世界、日本、県経済の新年の見通しなどを聞いた。
「米大統領選でトランプ氏が再選し、上下両院共に共和党が過半数を占める〝トリプルレッド〟となった。通商・外交や移民、財政、環境・エネルギーなど多分野で現行政策からの転換が図られるのではないだろうか。当面は関税引き上げが景気に影響を与えそうです」
トランプの不確定。どんなカードが飛び出すやら世界中がはらはら、ひやひや。手の内が読めないだけにトランプの手のひらの上で踊り、めまいなど起こさないよう確かで力強い日本ならではのカードを切ってもらいたい。
日本の最大の輸出先(23年)は米国(20.3兆円)で、2位の中国(17.8兆円)と合わせて輸出額全体(100.9兆円)の4割近くに達している。米国、中国向けはともに輸送用機器、一般機械、電気機器類の割合が高く、日本への関税引き上げが実施された場合、経済は少なからずマイナスの影響を受けることになりそうだ。
10年代の後半に米中貿易摩擦の激化を背景に日本経済が景気後退局面入りしたように、日本の対米直接輸出に対する影響のみならず、中国への一段と高い関税賦課や輸出規制の強化、世界景気の悪化などに伴う間接的な影響を大きく受ける可能性があると指摘する。
トランプ政権の政策により日本の自動車産業はどんな影響を受けるだろうか。国内の主要自動車メーカーのグローバル販売台数に占める米国販売の割合は、スバルが約7割を占めて突出しているが、トヨタ、ホンダ、日産、マツダも2〜3割を占め、各社とも米国を最重要市場に位置付ける。さらにメキシコへの関税引き上げを表明しており、日本に限らず世界の自動車産業に大きな影響を及ぼすことが懸念される。
米国は広島県の全輸出額の4分の1を超え、うち自動車が約4分の3近くを占めている。メキシコにはマツダのほか多くのサプライヤーも進出している。
関税引き上げがどうなるのか、それによりどんな影響が出るのか、裾野の広い産業だけに広島の経済界にとっても一大関心事といえよう。マツダの底力に期待したい。
さて、広島県の見通しはどうか。最近は輸出や生産に弱めの動きが見られるものの、設備投資が堅調に推移しているほか、個人消費にも持ち直しの動きが広がりつつある。
今後は輸出や生産が上向きに転じるとみられるほか、設備投資が堅調に推移。インバウンドが増加基調を維持する中で、個人消費も所得環境の改善を背景に持ち直しが進むとみられ、全国同様、緩やかな回復基調をたどると予想される。油断はできないが、まずまずのよう。
依然として人手不足は解消されそうにない。生産性向上に向けた投資や賃金などの就労条件の改善が求められる中で、大手と中小の対応格差が広がる可能性には注意が必要という。大都市圏と地方の格差も解決する糸口がなかなか見えてこない。経営者は気迫と知恵で踏ん張るほかない。