就任する前から世界を揺るがせたトランプ大統領がいよいよ動き出した。政治や経済のニュースは瞬時に世界を駆け巡り、遠く広島にどんな影響を及ぼすだろうか。今年で被爆80年。歴史をのぞき、未来を描くとき芸術、スポーツの果たす役割は大きい。
全国のマツダ車ディーラーで最古参の広島マツダは1933年、原爆ドーム近くで創業。被爆で初代の松田宗弥さんをはじめ全社員を失い、社屋も倒壊。翌年には教治さんが2代目に就任し、人の移動はもちろん資材や物資輸送に活躍した自動車の販売を通じて、広島の復興に力を尽くした。みんなの勇気、希望に支えられながら懸命に踏ん張ってきた歴史がある。
未曾有の苦難を乗り越えてきた広島の強さや誇りを伝え続けようと、文化活動や芸術を通じてさまざまな取り組みを進めている。
原爆ドーム近隣でグループ会社が運営する「おりづるタワー」は戦後100周年の2045年に向けた願いを表すため、9層のらせん状スロープの壁をキャンバスに見立てたウォールアートプロジェクトを2022年に開始。戦時中の呉を舞台にした漫画「この世界の片隅に」の作者こうの史代さんら、広島に縁のある9人が1層ずつ描いた。こうした取り組みが評価され、企業メセナ(芸術文化の支援)協議会の「メセナアワード2023」で優秀賞を受けた。
昨年10月には12K超の解像度の湾曲LEDビジョンを備える貸し会議室を新設。幅15×高さ2メートルと長大な画面に臨場感ある映像を流す。室内の柱にもビジョンを張って連動させる。ヒロマツHDの松田哲也会長兼CEOは、
「平和の願いを発信する場として国際的な関連会議に応じていく意気込みを示し、2045フューチャープレゼンテーションルームと名付けた。草木も生えないと言われた被爆直後から世界の想像を超えてたくましく復興した。同タワーのおりづるの壁に投入された折り鶴は100万羽を超え、思いが積み重なる。未来の希望を祈り、平和を願う人々の心に寄り添う施設であり続けたい」
地域への恩返しという言葉に実感がこもる。
昨年11月、アトリエ・ギャラリー「アートボーンヒロシマ」を中区幟町に開設した。新たに取得した8階建てビルにアーティストたちが滞在。創作活動を見学できるようにした。グッズ店とギャラリーも置く。大阪・関西万博ギャラリーで個展を開催予定の武蔵さんが広島をテーマに描いた作品や宮本拓也さんが世界平和を願った作品などがある。
制作者にアトリエとギャラリースペースを無償貸与するほか作品の販売促進などを通じ、創作に打ち込める環境を提供する。12人が参加しており、20人弱に増える予定。
「ウォールアートプロジェクトのメンバーから芸術を発信する機会が少ないといった悩みを聞いた。ここはアートが生まれる場所。制作者の息づかい、思い、熱量なども作品を形づくる一部として、皆が体感できる」
芸術、スポーツに国境は無く多くの人の心を動かす。企業、人の思いを重ね、広島の未来へつなげてほしい。