広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2025年7月3日号
正姿勢でいく

もう猛暑の頃か、7月20日には参議院選挙の投開票で各党の勢力図が定まり、果たして政局が動き出すだろうか。
 一段と世界情勢がこんとんとしてきた。トランプ関税の衝撃に右往左往し、世界各地で武力紛争が頻発する。平穏な日常とかけ離れて「なぜか」といぶかるほかないが、国をリードする政治家の見立て、心境はいかほどだろうか。
 もっぱら総理再登板がささやかれている。支持率低迷で不本意にも再選断念に追い込まれた岸田さんが再登板に向け気力、体力を充実。すこぶる元気という。日本公認会計士協会(東京)の新・旧正副会長ら幹部が広島に集まり、6月15日に「岸田先生を囲む会」があった。
 この会は当時、同協会の中国会会長を務めていた公認会計士の石橋三千男さん(77)が中国会会員に呼び掛け、2013年春に結成。定期的に開いていたが、岸田さんが21年10月に第100代総理大臣に就任し、併せてコロナ禍でしばらく開催を控えていた。
 当日は、協会の手塚正彦前会長、茂木哲也会長、7月に新会長に就く南成人氏ら8人が出席。トランプ関税ほか、ロシアとウクライナ、イスラエルとイランなど武力紛争をめぐる世界情勢が話題に上った。これから先、世界はどうなるのか、誰一人として的確に予測することはできないように思えるが、岸田さんは、
「日本にとって大変重要な問題で手を尽くしている。日本としてやれることをしっかり取り組んでいくしかないでしょう」
 差し障りのない答えのようだが、誠実な岸田さんの人柄が伝わってきたという。
 総理在任中の3年間に経済成長を軌道に乗せ、賃金アップや資産運用立国を打ち出すなど「新しい資本主義」の姿を描いた。安全保障分野などで多くの実績を残したと評価する声は多い。
 高姿勢や低姿勢ではなく、「正姿勢」を信条とし、向こう受けを狙ったような言動は少ない。一寸先は闇という。思惑や駆け引きが入り乱れる政界にあって、常に正しく物事と向き合い、正しく事態を見通すことは並大抵でないだろう。石橋さんは、
「まさしく公認会計士にとっても正姿勢こそ大切と思う。数字にはどういう意味があるのか、読み解く力を日々鍛錬していく正しい姿勢が求められている」
 と共感を寄せる。岸田さんへこんな提案もぶつけた。
「法人に全国100支店があれば、支店ごとに国に対して法人税、県には県民税、市町村に法人市民税などの申告と納付を必要とする。これらの課税基準は法人税の課税所得なので消費税と同様に国だけに法人税等として申告、納税することにすれば、納税者の事務負担のみならず、大幅な行政コストの削減が可能になる。まずは税法の〝棚卸〟が必要ではないか。租税法律主義は国民が理解できるものでないといけない。これを手始めに法律と制度の棚卸をして人的資源の有効活用、社会の効率化、行政コストの削減が必要ではないか」
 岸田さんは「そういう諸々の検討すべき課題がある」と受けた。よくぞ臆することなく専門分野のテーマをぶつけたあたりが、いかにも石橋さんらしい。一方で、じっと国民の声に耳を傾け、どんな時もとことん話を聞く根気があるという岸田さんらしいエピソードに思える。お二人の正姿勢に相通じるところがあるのだろう。

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