サッカースタジアム一帯の回遊・集客策を聞く①

サンフレッチェ広島総合戦略室長兼スタジアムパーク準備室長

信江 雅美 氏
広島のプロスポーツを応援!!【カープ&サンフレッチェ特集】|広島経済レポート

 中区の中央公園で建設中の「街なかスタジアム」が12月に完成する見通しだ。サンフレッチェ広島の本拠地として、市中心部のにぎわい創出が期待される。サンフレッチェの信江雅美氏と、スタジアム隣の広場の整備を手掛けるNTT都市開発の中村高士氏に今後の方針や集客策を聞いた。

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サンフレッチェ広島 / 信江 雅美 氏

-安佐南区にある現スタジアムの集客課題は。

 広島などの地方都市は、郊外同士をつなぐ公共交通網が乏しい傾向にあります。エディオンスタジアムはお住まいの地域によって、市中心部に一度出てからバスやアストラムラインに乗り換える必要がある。加えて、広域公園の駐車場は700台ほどで、それ以外は近隣にある学校の駐車場や、周辺地権者の遊休地などをお借りして、計約1500台分を確保する状況です。年間平均客数(約1万4000人)をスタジアムの収容人数(約3万6000人)で割る収容率は約38・8%で、これはJ1チームの中で一番低い数値です。

-「街なかスタジアム」はどのように集客しますか。

 ホーム試合を満員にするために、クラブが勝利へ全力を尽くすのは当然ですが、それ以外に多くの方に訪れてもらう「仕掛け」が重要です。
 スポーツ観戦動機の一つに飲食サービスがあります。新鮮な肉や魚、野菜料理などメニューの幅をさらに広げたい。席での飲食やトイレなどの離席時になるべくストレスを感じさせないため、他スタジアムに比べてメインとバックスタンドの席の間隔にゆとりを持たせています。
 さらに当初から掲げる「映像と音響の統合演出」イベントを試合前後に盛り込み、非日常的な体験をしてもらうことで、スタジアムで観戦するのが楽しい、家族でまた一緒に来たいと感じてもらいたい。新スタジアムのコンセプトの一つに掲げる「初めて来た人に繰り返し来てもらう」の好循環に向けて、ファンでない層の開拓を進めます。
 試合のない日にも県民・市民に日常的に足を運んでもらうには、本通商店街や地下街シャレオ、紙屋町・八丁堀など周辺の商業施設とどうつながっていくかが重要。2020年には電子商品券に交換できる「サンフレッチェコイン」を活用したシステム作りの実証実験を行いました。市中心部で飲食や買い物をすると対象店舗で使えるコインを獲得できる仕組みで、周遊する動機をつくれば、お客さまが歩いて来てくれることが分かりました。その後は本通商店街のウオーキングイベントへの協力や、昨年に紙屋町・基町にぎわいづくり協議会にも入会するなど、つながりを一層強めています。

-隣の公園広場の整備も進みます。

 スタジアム内には平和とサッカーの歴史などを紹介するミュージアムや魅力的なレストランなどの多機能化施設を計画。また隣接する公園広場には中央にある芝生広場を取り囲む形で、さまざまな飲食店や物販店舗、体験施設ができ、一帯が大きな集客施設になります。スタジアム内の多機能化施設の入口は全て公園側を向いており、芝生広場を訪れた人が360度見渡して、「今度はあの店に行ってみよう」といった会話が生まれる空間にしたい。市にはコロナ前の19年に1269万人の観光客が県外から訪れています。その人たちも立ち寄りたいと思える場所になることが必要で、こうした複合的な魅力がもっと市への滞在時間や日数を増やすはずです。
 例えば東京スカイツリーは電波塔の関係者だけが訪れる場所でしょうか。街のシンボルだからこそ多くの人が足を運びます。そして、その下に商業施設「ソラマチタウン」や「東京ミズマチ」があることでさらに満足度を高めています。これをスタジアムに置き換え、県民・市民、観光客といった、多くの人が訪れるランドマークを目指します。

CONTENT【カープ&サンフレッチェ特集】

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