広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2021年6月24日号
ものづくりネットワーク

広島という才能を、眠らせない。広島経済同友会のものづくり委員会がまとめた提言の巻頭言で、向田光伸委員長(マツダ本社工場長)は同友会の活動テーマである言葉を引っ張り出し、ものづくり復活へ懸ける決意をにじませた。日本の誇りだったものづくり。世界的な技術革新の潮流に乗り遅れたためか、急速に力を失ってきた。
 日本の製造業の労働生産性水準はOECD加盟38カ国のうち、2000年まで1位に輝いていた。だが、年々順位を下げ、18年は韓国に次ぐ16位に低迷。広島県の製造業労働生産性は全国で18位。従業員一人当たりの付加価値額(労働生産性)は全国平均を下回る。県の付加価値額は輸送用機械器具製造業が29.6%、続いて生産用機械器具製造業、食品製造業のトップ3で実に半分近くの47%を占める。しかし、このトップ3も各業種の労働生産性で全国平均を下回る。広島という才能は今後、どの方向へ向かうだろうか。
 同友会は「広島のものづくりのあるべき姿」として、
 −ものづくりに携わる人々が集まり、それぞれの強みを持った、各企業と人が「広島ものづくりネットワーク」でつながり、開発・生産・物流で「まるで一つの企業のようにつながり」高い付加価値の商品を開発して、高い品質と生産効率でモノを造り、高い効率で流通させ、販売する姿を実現−、と広島ものづくりネットワークをつくる使命、ビジョンを定める。企業の壁を越え、自前主義から自分の強みを他社との連携によって全体最適な仕組みをつくり、最大価値につなげる。広島一丸でぶつかる作戦である。
 その実践活動もこなした。経営者、工場長、幹部を対象に「ものづくり現場革新カレッジ」、「現場力実践交流会」、「デジタルものづくり塾」などを企画。例えば、ある食品メーカーで加熱による温度上昇推移と食感と色の関係を分析し最適な製造条件を見つけて生産性向上につなげることができた。複数企業による共同物流トライアルでは、日立製作所とマツダロジスティックスの協力で物流ロス削減が可能か検証するため往復共同輸送、迂回回避共同輸送、物流センター活用共同輸送を実施し、効率を向上させることができたという。人づくりではムダ取り塾(広島商議所)のほか、現場イノベーションスクール(ひろしま産振構)などの研修を活用したほか、ひろしまデジタルイノベーションセンターの協力を得て、デジタル技術活用につなげる取り組みなどを行った。公的な試験研究機関も整備されており、ものづくりネットワークをつくる素地はある。 
 13年から2期4年、同友会代表幹事を務めた森信秀樹さん(森信建設社長)は、北九州市イノベーションギャラリー(現在休舘・来春に新科学館の一部として開館予定)を引き合いに、
「子どもらにものづくりの必要性や楽しさなどを伝え、人材を育てる体験工房などがある。広島も製造業の人づくりや技術伝承などをオープンな場で行う、産学官連携が求められている。バタンコで一世を風靡(ふうび)した東洋コルク工業は世界のマツダとして広島経済を引っ張る。子どもの夢を育む、飛躍的な広島ものづくりの挑戦を止めてはならない」

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