広島にすごい会社がある。半導体装置製造のローツェ(福山市)は創業から36年間の平均成長率が21%を超えており、社員220人の平均年収は1122万円(2022年2月末時点)というから驚く。少人数の持ち株会社などを除き、新入社員を含めた全社員の給与水準は中四国地区で群を抜く。全国ランキングでも地方企業では異例の上位39位(東洋経済新報社調べ)という。
創業者で取締役相談役の崎谷文雄さん(77)は、
「さまざまな得意分野を持っている人を積極的に採用してきた。一人一人が個性を存分に発揮し、各分野でトップになれれば、会社全体でもトップになれると思って経営してきた。入社時に個人の得意分野を見定めるために、設立当初から3時間に及ぶ性格テストを実施している。そのような会社の中に身を置いて、私自身が子供の頃から好きな製品開発の仕事にずっと携わることができた。創業からいろいろとあったが、大変とは思わず、むしろ幸せだった。技術に自信を持って楽しみながら仕事のできる集団として価値の創造を究める。それを応援するための社風、仕組みづくりに努めてきた」
独立前に勤めた会社で、自身の発案した自律分散処理システム(配線数を大幅に減らし、機械部分に電子機器を組み込むシステム)の開発を頼んだが、聞き入れてもらえなかった。それで、自らやろうと40歳で会社を起こした。良いものを作ってもいずれは営業力、開発力、資金力のある大手に負ける。いい手はないか。日夜考えた結果、たどり着いたのが、世の中にないものをつくること。新聞や雑誌に新製品を発表すれば、無料で発信してもらえる。しかも自ら宣伝するよりもよほど価値が高い。他社が販売しているものと同等の製品はつくらない、世界的なニュースになる製品だけをつくると決めた。以来、超小型モータ制御機器をはじめ、世界初の製品を数多く市場投入。アルミニウムや電力などの調達コストで日本より優位性のある海外に早々と目を向け、米国、ベトナム、台湾、韓国、シンガポール、中国、ドイツへ次々進出した。現在、半導体の基盤となるシリコンウエハの搬送装置の分野で世界シェア1位に駆け上った。
経営の秘訣は案外と単純なのかもしれない。1997年に上場。日米の株主総会のやり方を調べる中で、ビジネスに向かう根本的な相違に驚かされたという。
「日本企業は株主総会で会社のやり方にケチを付けられないよう、責任を取らされないようにするため、早く終わらせることを優先しているように映る。そのせいか、質問に対して適格な回答をしていない。しかし、米国企業は株主に自社の魅力を直接伝えるチャンスと捉え、積極的な情報開示に努めている。総会後は会社見学を実施し、社員全員で歓待。改善提案を積極的に受け入れ、それを実践する。イノベーションを起こす源泉に思えた」
90年代、備後地区は人口当たりの上場企業数で全国トップの時期があった。
「備後の人は、ずけずけと良いことも悪いことも本音で語る。これは米国に近い。成長の原動力ではないか」
2月22日午後4時から、ひろしま環境ビジネス推進協議会(事務局・広島県)が広島市内で開く経営者向けセミナーで講師を務める崎谷相談役のズバリに期待。