広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2020年10月15日号
広島があぶない

なぜか。総務省の人口移動報告(2019年度)によると、広島県は転出者が転入者を上回る、いわゆる社会減が8018人に上り、全国ワーストだった。 
 新しいことに挑戦する進取の気性にあふれた県民性があるから、どんどん外へ飛び出していくのだろうか。一方で保守的な一面があり、大きく門戸を開くことのない県民性があるから、なかなか外から人が寄りつかないのか。
 県人口のピークは1998年11月の288万5617万人。それから22年後、8月1日現在で279万7703人にまで減り続け、ざっと8万8000人の人がいなくなった勘定になる。さらに減り続ける気配だ。働き手や消費者が減り、地元経済が衰退していく心配はないのか。県外からの移住対策を担当している広島県地域力創造課の山田和孝課長に聞いた。
「人口社会減の対策のうち、転入促進の取り組みの一つとして県外からの移住促進に取り組んでいる。全国的にも東京への一極集中の傾向になかなか歯止めが掛からないが、若い年代にみられる新たな地方移住の動向を取り込んでいくため、広島らしいライフスタイルの発信や、若年者の仕事マッチングなどに力を入れている」
 有楽町駅前の「ふるさと回帰支援センター」内に県職員を派遣し、14年10月に「ひろしま暮らしサポートセンター」を開いた。東京で相談員を採用するケースがほとんどだか、県職員の派遣は全国でも広島と和歌山県だけ。
 ふるさと回帰支援センター全体では、移動相談件数は7年で約7.6倍の5万件近くに急増し、相談者の中心がリタイア層から働き盛りの40代以下へシフト。10年前に40代以下の割合は全体の約3分1だったが、18年度は72%強にまで膨らんでいる。
 リーマンショックなどの影響を受け、働き方に関する価値観が変わり、相次ぐ大災害に高度都市機能基盤のぜい弱性に気付いたせいなのか。県では、暮らしや仕事における人生のステップアップを地方に求める移住希望者が増えたのではないかと分析する。
 地域資源を生かした仕事や暮らしをしようとしているのであれば、海と島、山、川の豊かな自然と都市が近く比較的に働く場所に恵まれている広島に出番がありそうだ。ライフスタイルにこだわる層に広島の魅力をどうやって伝えるのか。自己PRが下手だから魅力に気付いてもらえないなどの言い訳は通用しない。お国自慢大会では全国どこも同じに見えてしまう。
 有名ではないが、県内にはナンバーワンやオンリーワン企業も多く、高度な技術職を求める人材へ十分にアピールできる。何しろ移住希望地ランキング(19年)で広島は全国2位に躍進。脈はある。
 県が推進する転入促進作戦には、新卒学生UIJターン就職の応援、プロフェッショナル人材の獲得などもある。転出抑制では県内高等教育機関への入学者確保、県内外留学生の県内就職の促進など。どれも一朝一夕に成果を上げることは難しいが、こつこつと積み重ねるしかない。
 移住対策としてAIを活用した相談窓口や、東京のネットワークと県内の受け皿をつなぐ新たな仕組みを計画している。次号で紹介したい。

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