なぜそこまでやるのかと思うが、流通業界の再編統合の動きは地方も巻き込み、容赦がない。他社を圧倒するためより強く、より大きな力を持って覇権を競う。生存本能そのものなのだろう。
スーパーのフジ(松山市)は9月1日、流通大手のイオン子会社で南区段原南に本社を置くマックスバリュ西日本(MV西)と2024年3月を目途に合併し、イオン子会社の新会社を設立すると発表した。フジはイオンの傘下に入り、活路を広げる。
中四国に132店を展開するフジの前2月期売上高は3153億円。同エリアに381店を擁するMV西は同5332億円。両社を足すと8500億円近くになる。イズミ(東区)の6797億円を抜き去り、商業施設やスーパー運営で一躍、地場トップに立つ。イズミはどんな手を打ってくるだろうか。中四国の覇権をめぐり、全面対決の様相を呈してきた。
ひと足速く、2018年4月にイズミはセブン&アイ・ホールディングスと業務提携した。これに応じるかのように同年10月、フジはイオンと資本業務提携すると発表。このときから両社の合併は既定路線だったのだろう。
もう一つ動きがあった。百貨店の天満屋(岡山市)は9月3日、広島緑井店をフジに譲渡し、来年6月30日をもって閉店すると発表。フジは隣接地で運営するフジグラン緑井と一体的に運営する構想を描き、取得後に全面改装する予定という。かつて天満屋は中区の八丁堀店、西区のアルパーク店と合わせて市内3店体制だったが、これで3店共に姿を消すことになり、広島県内では福山市の2店だけになる。近年は郊外へ大型商業施設が次々と進出し、一方で閉店と再開発を重ねて広島都市圏の商業地図はめまぐるしく変貌。底流にはとてつもなく大きな力が作用しているのではなかろうか。
流通業界の再編統合が加速する背景には人口減少、少子高齢化による家計消費の縮小に加え、経営効率を高めるデジタル化投資、カード特典による囲い込み、自社ブランド(PB)商品の開発や仕入れ交渉を有利に運ぶ必要にも迫られているという。
一方で異業種からの参入や業態間競争が一段と激化。百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ディスカウントストア、ドラッグストア、家電量販店やホームセンターなどが縮小する市場を奪い合う。コロナ禍が促したのか、最近は広島でもスマホから注文する宅配サービスが次々に登場。生鮮品などを満載した移動販売車が住宅団地を巡回し、消費者の近くまでやってくる。新手の通販やインターネット購買なども業界を揺るがす。
県内はハローズ(福山市)やエブリイ(同)が出店攻勢をかけ、地元スーパーのフレスタ(西区)、万惣(佐伯区)、藤三(呉市)、スパーク(西区)、西條商事(東広島市)などがそれぞれ隙間を埋め、地域密着の独自路線で生き残りを懸ける。
安くて良いだけでは太刀打ちできない。便利とか、高くても買いたいと考える消費者の選択肢は格段に広がっており、この要求にどう応えていくのか。大手と地元資本、新旧勢力を交えて生き残り作戦がエスカレートしそうだ。