広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2022年3月3日号
新しい広島のシナリオ

歴史をのぞき、未来図へのシナリオを描くと、いま何をなすべきか、将来のあるべき姿が見えてくると言う。
 本誌の懸賞論文「10年後の広島の自動車産業のあるべき姿」で最優秀作品に選ばれた寺田高久さん(67)の提言を抜粋し紹介したい。(要約)
「自動車からモビリティ、そしてMXへ」あらゆる経済活動の根本には移動がある。それが廃れることはない。移動は永遠だ。いま自動車と呼ぶより、多様化したドローンやロボットも含めて、幅広くモビリティと呼ぶ時代が迫っている。そのモビリティに関する革新的な潮流を、ここでは「モビリティ・トランスフォーメーション」(以下MX)と命名しよう。MXに特化した新しい町おこしを行い、広島全体が自動車、ドローン、ロボットを生産する「MX特化都市域」となるよう、産業転換を仕組もう。
 のっけから未来図を示す。本論から離れるが、シナリオ法を採用した理由の一つは、未来の社会環境が現在の延長上にあるとは限らない。逆に10年前、リーマンショック後の世界同時不況でデフレ経済に突入。東日本大震災で原発停止が相次ぎ脱原発、脱炭素の流れが世界的に加速。デジタル化の流れも大潮流になった。最近ではパンデミックで人流が停止。一つの契機で関連する事象が連鎖することなど誰も予測できなかった。だから科学的手法では不連続に起こる変化の予測は困難。
 二つ目の理由は、ニーズ掘り起こしからマーケットの課題が発見され、新ビジネスが編み出されるメカニズムが必ずしも上手くは機能しない。そんな予測が完璧にできるはずもない。まして「MXやMX特化都市域」などへの道筋は予測不能だ。課題を発見した時、すでに手遅れになっていることが多い。ビッグデータをAIでリアルタイムに解析し、データドリブンな対策を立案するデータサイエンスの時代に変わりつつある。
 マツダブランドの国内シェアは4%。4%には4%の矜持(きょうじ)があり、スパイスの利かせ方があると言う。自動車産業のあるべき姿を想像し、その姿を現状と比較して差異を明らかにし、将来の姿を予測できれば道筋は自然と見えてこよう。その意味で本稿は今後の自動車産業のあり方をバックキャストし、コンセンサスを醸成するツールである。
 オープンイノベーションにもつながる毛利の三子教訓になぞらえ、「地域の要となる自動車メーカーがまさか愚行を演じるとは思わないが、もしそんなことになれば広島の街が破綻する」とズバリ。 
 次の四つを提言する。①「策略と変化への即応」戦国時代にも似る競争と提携が繰り広げられ、合従連衡も避けられない。その仕掛けは三子教訓に倣うべきであり、はかりごとは計画的、組織的にされるべきだ。②「イノベーションの重視」自前主義も大事だし過去の成功体験も大事だ。より大事なのは地域にエコシステムを整備し、社外人材や異業種を取り込んでイノベーションを起こす。③「新たな興業」を支援する。④「あらゆるコラボレーションへ」産学官金はもちろん、起業家やスタートアップ企業も含めたM&Aも交え一致協力しよう。 
 新しい広島の姿を描く提言の全文を専用サイトに収録。ぜひ読んでいただきたい。

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