広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2022年11月24日号
自慢の海の幸

魚のプロが自慢する広島湾の海の幸。広島市や広島中央卸売市場は「広島湾七大海の幸」と称し、魚を食べるプロジェクトを本格化。生産量日本一のカキのほか、メバル、小イワシ、オニオコゼ、アサリ、クロダイ、アナゴのPR作戦を展開し、消費拡大をもくろむ。今年度は広島修道大学健康栄養学科の藤井文子教授や学生が協力し、海の幸を使ったレシピを考案。10月25日、同市場内の多目的スタジオで発表した。
 小イワシの磯辺唐揚げ、クロダイと小松菜のミルクスープ、コロコロ黒鯛コロッケ。6月から関係者らが毎月集まり、素材検討からアイデア出し試作、意見交換を重ねて当日の試食にこぎ着けた。今後は完成度を高め、学食や食品スーパーの総菜向けなどにつなげる構想だ。
 この取り組みは瀬戸内フードコミュニティー(略称SFC、栗栖恭一代表=上万糧食製粉所社長)が県中小企業団体中央会の支援を受け、中央卸売市場魚食普及委員会(望月亮委員長=ヒロスイ社長)と連携する「瀬戸内サスティナブルプロジェクト」の一環で推進。SFCは川中醤油、上万糧食製粉所、丸徳海苔、広島魚市場、よしの味噌、日東食品工業の6社が参画し、SISコンサルティング(澤田照久社長)の支援のもと、2018年4月立ち上げた。
 カキの養殖いかだが浮かぶ波静かな広島湾には太田川をはじめ、多くの河川から豊富な栄養素が流れ込む。魚介類の生息に恵まれた環境を備えており、カキや地魚を使った料理が親しまれてきた。DHAやEPAなどが含まれる水産物の健康効果として心筋梗塞、脳卒中、肝臓・膵臓がん予防のほか、知能指数を上昇させる効果もあるという(水産庁資料より)。しかし魚の消費量は近年、急速に減り続ける。このまま傍観していると漁業が衰退し、貴重な水産資源を失う危機感を背景に、全国的にさまざまな取り組みが始まっている。
 SFCメンバーの川中敬三さん(川中醤油会長)は、
「瀬戸内の水産資源は乱獲などの影響も受け、魚の数が減っているという。持続可能な漁業を守り、水産資源を獲り続けられる、持続的に市場に出ていく。その二つの仕組みが求められている。食と食文化を資源とする瀬戸内フードツーリズムの取り組みと二人三脚で進めており、大きな効果を願っている」
 調味料などを扱う各6社の製品で瀬戸内海の水産資源の付加価値を高め、価格競争とは一線を画した新たな市場開拓を目指す構えだ。今回は市場内仲卸のヒロスイがクロダイを一口大の冷凍ブロックに加工して提供。日頃、魚を下ろす機会の少ない学生たちにとって扱いやすいと好評。既に一部スーパーへも卸す。課題が新たなビジネスチャンスを創り出す「地域コミュニティー」の力を発揮し、多様な発想と知恵、取り組みを集結するオール広島で活路を開いてもらいたい。
 今回のプロジェクトで学んだ学生が家庭で広島湾の魚を自慢し、親になって健康を育む家庭料理にいそしむ。ホテルの料理長、居酒屋の板前が「広島湾で育った魚介類は天下一品」と誇らしく話す。そして国内外から訪れた観光客が舌を巻く。来年のG7サミットは絶好のチャンス。

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