広島経済レポートの記者が注目する旬の話題をコラムで紹介。
トランプの不確定。どんなカードが飛び出すやら世界中がはらはら、ひやひや。
がちんこの米中貿易摩擦をはじめ、激動する世界経済のあおりを食らえば、たちまち翻弄(ほんろう)される日本経済。景気のリスク要因が広がり、なかなか予測困難だろうが、県経済の今年の見通しについて、広島銀行系のひろぎん経済研究所の角倉博志理事長は、
「設備投資の堅調などを背景に、緩やかに回復するのではなかろうか。昨年の西日本豪雨からの復旧・復興なども景気の下支えとなる見込み。ただし、世界経済のスローダウンや米国の通商政策の影響などから、輸出の増加ペースが鈍化する見通しで、景気の回復テンポは緩やかなものにとどまる。県経済は、米国向けの自動車輸出の割合が全国よりも高く、今後の米国との通商政策の動向に、特に留意する必要がある」
▷輸出=マツダが2023年度で200万台の生産体制を発表する中、主力の自動車が底堅く推移する見込みであることから、引き続き増加基調で推移。ただし、海外経済のスローダウン等から全体では緩やかな回復にとどまる。
▷生産=昨年7月豪雨の影響で自動車や一般機械が大幅に落ち込んだが、挽回生産を背景に徐々に持ち直し、10月には災害前の水準に戻った。19年度生産活動は緩やかな増加基調が続くものの、輸出の鈍化等から昨年よりも増勢が鈍る見通し。
▷企業業績=日銀短観(18年12月調査)によると、18年度の県内企業の売上高は2年連続して前年度を上回る見通し。ただし、原材料費や物流費、人件費などによるコスト増加から、経常利益は前年を下回る見込み。また、中小企業は、10月の消費税率引き上げによる価格転嫁が進まない場合は収益の圧迫要因になる可能性が高い。
▷雇用・所得環境=県の有効求人倍率(18年11月)が全国2位の2.11倍となるなど、労働需給はひっ迫した状況が続いている。しかし、全国同様に名目賃金・実質賃金とも伸び悩んでおり、労働需給のひっ迫度合いが賃金上昇に十分には反映されていない状況がうかがえる。この要因として賃金水準の低い労働者増加による一人当たり賃金の伸び悩みが考えられるが、雇用者数の増加から、家計全体の収入は増加していると推察され、所得環境は改善傾向にあると考えられる−など。
ケーズデンキの新規出店(春)やエディオン広島本店建て替えオープン(初夏)ほか、夏以降に「ekie」第4期開業が予定されている。マツダの新型エンジン搭載の新型車発売の明るい話題も。
ゴルフに例えて、
5月ホールでは「富士山」(新天皇即位)を眺めながらのプレーとなるので、この絶好のロケーションを味方につけて気分的に乗っていくことが重要。また本コースでは「グリーン整備」(復旧・復興)が進められて状態が良くなってきているので、パットを確実に沈めることが大切。10月ホールには乗り越えるべき「大きな池」(消費税率引き上げ)があるほか、トランプさんの作った「バンカー」(保護主義)も設けられており、スコアメイクに苦労・・・。だが、難コースに挑み、油断なく慎重にプレーすれば好スコアにつながることが多いという。
今年は、広島商工会議所の会頭改選期。いつもなら夏ごろから次期会頭の選出をめぐる動きが始まるが、今回は年明け早々からいろいろと話題に上りそうだ。
3期9年目の深山英樹会頭(77)は10月で任期を満了する。一方で、広島経済同友会の次の代表幹事に、広島ガスの田村興造会長(67)を内定し、4月の総会で正式決定する。任期は2年。慣例として2期4年を務める。そうすると4〜9月の半年間、広島ガス出身の商議所会頭、同友会代表幹事の任期が重なることになる。両団体トップを一つの会社から出すのは負担が大きく、これまで避けてきた。しかし、半年限りならと広島ガスや関係者の了承を得て、次期代表幹事が内定した経緯がある。既に深山会頭は「今期をもって退く」意向を固めているという。
広商議会頭は、日本商工会議所の副会頭、中国地方商工会議所会頭も担う。近年は「ご三家」と呼ばれるマツダ、中国電力、広島銀行を軸に選考を進め、水面下で打診したものの不調に終わり、異例ともいえる3期9年に及ぶ深山体制が続いた。
目下、商議所ビル移転・建設計画のほか、遅々として進まない旧市民球場跡地の利活用、サッカー専用球場建設などの課題を抱え、行政と足並みをそろえて推進していく重責をどうこなしていくのか。ぐいぐいと広島を引っ張るリーダーの登場を願いたい。はや有力候補者に、4月で任期を満了する同友会の池田晃治代表幹事(広島銀行会長)らの名が上がるが、さて。
魔法の杖など存在しない
先週号に続き、マツダデザイン部門リーダー、常務執行役員の前田育男さんの著書「デザインが日本を変える」の第3章「ブランド論」のさわりを紹介したい。
一般ユーザーにいくつかのプロトタイプを見てもらい、意見をヒアリングして、それを商品に反映させるという過程に強い不満を抱いていた前田さんは「市場調査の廃止」を決断。こう述べている。
−数年後に発売されるモデルに何が求められるのか、はたして一般のユーザーにわかるのだろうか。そもそもユーザーの言う通りにデザインや中身を変更するということはメーカー側の意思やポリシーはゼロということにならないか。そんな受動的な姿勢でいる限り、マツダ独自のブランド価値はいつまで経っても確立できないと思っていた。
−マーケティングに携わる人たちはブランディングと呼ばれるイメージ戦略によってブランド価値を上げられると考えているようだが、私に言わせればそんな魔法の杖など存在しない。錬金術のようなやり方で誰もが憧れる理想の商標を手に入れることなど逆立ちしてもできはしない。ブランドにとって一番大事なものそれはまず作品である。最高のブランドを作ろうと思ったら、まず最高の作品を作るしかない。作品自体が個性的で世界のトップを張れるようなものであれば、おのずとブランド価値は付いてくる−
世界的に評価されるマツダの「魂動デザイン」誕生までに、経営戦略にまで切り込むデザイナーの矜持(きょうじ)があり、その挑戦は個性的だが、さまざまな企業経営に通底するアピールに満ちている。