広島経済レポートの記者が注目する旬の話題をコラムで紹介。
沸騰しそうな地球を放置できない。カーボンニュートラルの取り組みをビジネスチャンスとし、世界中の会社が虎視眈々(たんたん)と新規参入をうかがう。
広島県(湯崎英彦知事)は環境課題を解決する新しい産業・事業を生み出す支援事業を展開している。本年度は石崎ホールディングス(安芸区矢野新町)、カキの取扱量で国内トップクラスのクニヒロ(尾道市)など4社を対象に環境・エネルギー分野に特化した事業創出への取り組みをサポート。県が事務局を務める「ひろしま環境ビジネス推進協議会」は2月27日、4社の成果報告会を開く。
環境に関わる自社の課題を広く発表し、一緒に事業開発を担ってくれる相手を募るオープンイノベーションの手法を採用。思いがけない分野からプロが驚くアイデア、ヒントが飛び出してきた。
自動車や住宅のガラス加工を手掛ける石崎ホールディングスは、年1000トンに及ぶ廃ガラスの再利用に挑んだ。これまでは産業廃棄物として業者に引き取ってもらっていたが、ヘアケア用品などの企画・開発を手掛ける東京の会社と組み、香水ボトルに再利用するプロジェクトをスタートさせた。
ガラスは大きく分け、住宅用などの「板ガラス」と「瓶ガラス」がある。同じガラスでも原材料や製造工程が異なり、そこには想定したよりも大きな壁があった。石崎泰次郎社長は、
「ガラスを扱うプロを自負していたが、瓶ガラスは分からないことだらけ。国内でも珍しいチャレンジになった。まず廃ガラスを溶かして瓶に再加工してくれる業者を見つけるだけでも相当苦労した。やっと萩市のガラス工房に賛同してもらい、何とか形にすることができた」
再生したガラス瓶の中に県産レモンなどから蒸留した香水を詰め、県内外の百貨店で販売する計画を立てる。
「香水用だけで全ての廃棄分を再利用できるわけではないが、視野が広がった。これを契機に環境分野の新事業に継続して取り組んでいく」
全国的な鳥インフルエンザの影響でカキ殻を飼料とする需要が大幅に減り、県内にある殻の集積場がほぼ満杯となる中、クニヒロはカキ殻の高付加価値化に着手した。米国の大学発バイオベンチャーと組み、これまで再利用する前段階に必要だった1年ほどの天日干しの期間を大幅に短縮した上で、殻から抽出した炭酸カルシウムをナノ化する技術を開発。これから食品や医薬品、化粧品などの原材料として提供する構想を描く。新谷真寿美社長は、
「カキ殻の処理は業界の大きな課題となっている。何とか解消できないかという思いを持っていたが、カキを扱う仕事柄、繁閑の差が大きく、なかなか踏み出すことができなかった。他社と短期間に集中して取り組むことで、スピーディーに行動する大切さを痛感。自社だけでは到底思いつかなかった新しいアイデアを得ることができた」
まさにオープンイノベーション効果だろう。
そのほか、三共ポリエチレン(廿日市市)は、フィルムの生産工程で発生していた不具合をAIカメラで自動検知する技術開発に挑戦。自動車部品製造の八城工業(東広島市)は自社のプレス工場で発生する騒音を逆手に取り、その振動・騒音を低減する商品開発に取り組んだ。案外と身近にあったビジネスチャンスを発見した価値は大きい。
松下幸之助さんの〝ダム式経営〟は常に余力を保ち、困難な時にはダムの水を少しずつ放水するように資金を回せば、経営を健全に継続できると説く。
講演の後に「どうしたらダム式経営ができるようになるのか」と問われ、一瞬黙り込んだ松下さんは、
「それは、ワテにも分かりまへん。ただ思い続けることでんな」
会場に笑いが漏れたが、京セラ創業者の稲盛和夫さんはその答えに衝撃を受けたと後に語っている。この逸話を引き合いに、東証グロース上場のデータホライゾン(西区)社長の内海良夫さんは、
「思い続けることがいかに大事なことか、実践した人には心の奧深く刻まれている。寝ても覚めても考え続ける。経営とは祈り、思うことから始まると受け止めた稲盛さんのすごさなのだろう。追い求めているものが射程距離に入った瞬間、間髪入れずキャッチできるか。ちょっとした雑談の中のヒントに気付くことができるか。常に考え続けているからこそ物事はかなう。誰しも一瞬は志を持つ。だが持ち続けることができるかどうか、大きく道を分ける」
いま日本人に志はあるだろうか。2022年の労働生産性の国際ランキング(日本生産性本部調査)で、日本はOECD加盟38カ国のうち30位。G7で最下位。1位のアイルランドはIT産業を呼び込み、生産性を飛躍的に伸ばした。1980年代にジャパン・アズ・ナンバーワンと評価された日本に油断、奢りはなかったか。
「戦後たったの30年で、GDP順位で世界2位に躍り出たが、その後失われた30年で経済は急速に衰退した。江戸時代の日本は庶民まで読み書きそろばん、論語の精神教育が広く行き渡っていたという。当時、欧州でさえ教育は特権階級のもの。江戸末期に日本の将来を憂えた下級武士の志が明治維新を為した。昭和へと移り敗戦に沈んだ日本が、世界を驚かせる成長を遂げたのも志を持った人を育てる教育が連綿と息づいていたからだと思う。一燈照隅、万燈照国(最澄)。いまこそ志のある人間を育て、一人一人が一隅を照らす力を発揮する気風を起こす。そうしないと日本はさらに沈んでいく」
世界的にも珍しい、等しく医療を受けることができる国民皆保険制度を守るため、健康寿命の延伸と医療費適正化を避けて通る道はない。この二つの課題を正面に捉え、データホライゾンは真っ先にレセプト分析に切り込み、PDCAで効果的な保健事業を促すデータヘルス関連サービスを全国展開。420自治体ほか健保組合や協会けんぽへ導入する。DeNA(東京)グループとして医療関連ビッグデータの利活用にも挑む。
どんなささいな事も「因」によって生じ、「縁」によって結果となる。その原理・原則を経営指針に掲げる。
「因は自分の心のなかにある考え方や見方。縁は人との出会いや関わり。成功者は出会いや縁を大切にしている。自分以外の人がみな潜在能力になることを経験している。志を持って思い続けると縁に気付き、縁に味方される」
少子高齢化の難題を抱える日本だが、悲観している暇などない。例えばバッテリー技術の全固体電池やLSI(大規模集積回路)の分野に切り込んでいく。むろんテーマはほかに幾つもあるが、誰が真っ先に切り込むか、ここが勝負の分かれ目という。
幼い頃、為せば成ると刷り込まれた。チャンスと見たら素早く動く。倒産さえ再起のチャンスとした。そうして起業したアスカネットの上場(東証グロース)まで成し遂げた福田幸雄さん(75)は特有のひらめきから商機をつかみ、自分流ビジネスを貫く。いま「私の終活」と、はばかることなく、新年早々、新ビジネスを立ち上げた。
1月18日、東京都港区の南青山にスイーツ店「BEYOND SWEETS 表参道店」を開業。おいしいとカラダにやさしいという二つを両立し、スイーツの常識を越えた発想を店名に込めた。デジタル写真加工のアスカネット創業者で、5年前に同社会長を退任後、ファブ(中区幟町)の社長に就く。5年後には誰もが知るスイーツブランドに育てたいと意気軒昂だ。
すぐにはできないが、できない理由を解決すればチャンスになる。商売人だった祖母から為せば成ると教わった。「中学生の頃、白黒テレビで複数のチャンネルを視聴するには高額のチューナーが必須だったが、チューナーが無くても視聴できる方法を編み出した。自分が見たかったからみんなも同じと仮説を立て、近所の家に営業して回ったら大当たり。誰も手を付けていないことからチャンスが生まれると実感した」
20代の頃。海外のファッション雑誌に載っている、洗練された服が全国どこを探しても無く、作れば売れると考えた。生地屋と縫製工場の出資を得てアパレルメーカーの経営に打って出ると、服は飛ぶように売れた。
噂になり、一時は工場から東京の会社へ納品される商品を有名店舗のバイヤーらが朝から待ち構えているほどだった。だが、過度な拡大路線があだとなり、倒産に追い込まれる。事業に失敗した経営者がもう一度立ち直るための勉強会「七転び八起き会」に入り、学び直した。
広島に戻り、趣味のカメラで再起をかけた矢先の機転がまさに真骨頂といえる。当時の葬儀社は遺影写真を作成するため写真屋に持ち込み、出来上がるまで数時間ほど待たされた。そうした手間暇をはぶくことができないか。
「ユーザーは新しいことが大好きだが、面倒なことは大嫌いだ。電話一本で遺族宅に出向いて一緒に写真を選び、遺影写真にして祭壇に飾るまで全部を引き受けたところ、広島の葬儀社の大半から仕事が取れた。本当は相手がやらないといけない領域へも飛び込み、ユーザーが大変だと思っていることを代行するサービスにまで引き込む。商いの根っこに気付いた」
新事業を立ち上げたファブの着眼もユニークだ。健康な食べ物を切り口にした食品があふれる中、甘いものを食べるときは多少の罪悪感があるせいか、スイーツの分野は比較的競合が少ない。動物性食品を使わないビーガンスイーツのジャンルはあるが味や見た目がいま一つ。世界のブランドがひしめく「表参道」においしさと健康を追求したスイーツ店を出そうと計画して有名ブランドのパティシエにビジョンを語り、ようやっと口説き落とす。
「メディアや有名インフルエンサーに、本当においしい健康系スイーツができたからぜひ試食会に参加してほしいと大見えを切ったところ、一気に取り上げられ、複数の大手百貨店から誘いを受けるなど、大変な反響だった。カラダに良い食べ物は、みんながみんなに薦めてくれる」
うちの得意は力仕事です。総合印刷業で、今年12月に創業105周年を迎える中本本店(中区東白島)の中本俊之社長(62)の答えに、少し驚いたことがある。
1998年12月に4代目を継いだ間もない頃、同社の得意分野を尋ねたところ、いかに大量の、納期の厳しい注文だろうと必ず仕上げる「力仕事」だとけれん味がなく、品質、納期厳守などの答えを予想していただけに、その言葉が新鮮に響いた。引き受けたからにはきっちりと約束をこなしてきた高い技術力に自負があったのだろう。
印刷業界の技術革新はすさまじい。活版、オフセット、デジタル印刷へと目覚ましくその都度に相当額の設備投資を求められる。職人から技術者へと世代交代していく人材の確保も並大抵ではない。
同社は2015年に機密印刷サービスがものづくり革新事業に採択されたほか、「ひろしま食べる通信」創刊、クリエイティブ部門ライツ・ラボを立ち上げるなど持ち前の技術、提案力を動員し、新しい市場開拓に挑んできた。そうした経験を重ね、さまざまな養分を吸収しながら独自の力を蓄えてきた。
昨年10月中旬、50年ぶりに開いた「全日本印刷文化典広島大会」は、全ての都道府県から580人が集まった。どうやって印刷業界を元気づけるのか、広島大会の主題だった。メイン企画の全工連フォーラム「未来はバックキャストで切り拓け〜事業家魂に火をつけるSFプロトタイピング経営戦略〜」は、
「30年後といってもおそらく我々、人が知りたい、感動したい、伝えたい、これはそう変わらないと思うが、情報コミュニケーション、そしてテクノロジーは大きく様変わりしている」
と切り出す言葉から始まった。先に未来を描いて「今何をなすべきか」の問いに次々意見が飛び出す。県印刷工業組合の理事長として大会委員長を務めた中本社長は、
「何をなすべきか。時代が移り、技術革新のある限り永遠の課題だが、その発想の実現は事業家魂に懸かっている。紙でも、デジタルでも情報が円滑に伝わることが一番。やみくもにデジタル化を進め、本当は紙媒体の良さを生かせる場面であっても、紙媒体がなくなってしまうのはもったいない。もっと広く紙媒体の良さを再認識してもらう行動を起こし、新たな光を当てたい。刺激し合い、一人一人がとことん考えることが大切。広島大会は将来、大きな成果へつながると確信している」
利用する側も媒体を使い分ける判断力が試される。研究機関の調査によると、紙媒体は①一覧性が高い、②保存性が高く、繰り返し見ることができる、③記憶に定着しやすい、④伝えたい相手に物として情報を届けることができるほか、視覚的な魅力、手触りといった利点を挙げる。しかしデジタルメディアの即効性にはかなわない。
「印刷することは目的ではなく手段。印刷を注文する顧客の後ろには必ずニーズが隠されている。そのニーズを捉えて紙媒体以外の解決策も提案できるソリューション提供事業を目指す。どのような業界にも通底する商いの原点ではないでしょうか」
イベント広告を扱う経験を生かしてイベント運営に乗り出した会社、コンビニ向け販促ツールを集約して配送業務まで請け負う会社も現れている。いかに得意を生かすか、反攻の決め手になりそう。
同じ写真なのに、それを印刷する紙質によって、見る人に与える印象が変わる。これまでベテランの感覚に頼ってきた「紙を選ぶ基準」を数値化できないか。今年12月で創業105周年を迎える総合印刷、企画、デザインの中本本店(中区東白島町)が新たな挑戦を始めた。
昨年4月から中国地域創造研究センターの「質感色感研究会」に参加。広島国際大学と同センターの協力を得て写真印刷の評価実験を行った。複数の紙に印刷した同一の写真を見て、つやつや、あざやか、シャープ、目立つなど、16種類の表現に最も当てはまると思うものを選ぶアンケート調査を実施。社員26人の有効回答を基に紙の質感、色感などによって異なる印象を分析し、5段階で評価したチャートを作成した。
例えば「優しい」イメージにしたい場合はあたたかみ、しっとりとした印象の数値が高い紙が適切-といった提案の根拠をチャートから割り出す。これまで印刷業界はベテラン社員の直感的、経験的な判断で紙質による差異を言語化していたが、若手の営業担当も説得力のある紙選びの提案を、可視化して示すことが可能になった。
その研究成果を昨年12月9日、日本人間工学会中国・四国支部大会で発表した。同業他社へも共有することで業界全体の提案力を高め、近年インターネットや動画などの新しい媒体の台頭に押されてやや苦戦している印刷業界、紙媒体の需要掘り起こしを促したいという。
4代目の中本俊之社長の長男で、昨年12月取締役に就任した達久さん(33)は、
「当社は日常的に約400種に及ぶ紙を扱っている。紙質の違いは非常に繊細で、取引先にその微妙な違いを明確に伝えることは難しい。数値化することでベストな提案を引き出すのが狙い。受注・発注者の双方に、より満足度の高い印刷の品質を高めていく。紙媒体ならではの特長、その魅力を広く、分かりやすくアピールしていく不断の努力が大切だと思う。裏方ではあるが、産業や文化を先導してきた印刷業界、紙媒体の復活に少しでも役立ちたい」
2014年に東京大学経済学部を卒業後、三菱UFJ銀行に入行。早くから親子で得心していたという家業を継ぐため帰郷し、22年1月に中本本店に入る。銀行から印刷業界に移り、日々特訓中。
極めて貴重な職人の技を次の世代へどうやって伝え、発展させていくのか。時代が求める経営にどう適応していくのか。技術、ノウハウを先輩から後輩へ伝承してきた老舗ならではのテーマも抱えているのだろう。
昨年秋、50年ぶりに「全日本印刷文化典広島大会」が広島市内のホテルであった。中本社長は16年から広島県印刷工業組合の理事長を務め、広島大会委員長として東奔西走。こんな話をしてくれた。
「印刷業界はバブル景気も反映し、ピークの1991年に製品出荷額8.9兆円と成長カーブを描いていた。ところが以降、新媒体の台頭やデジタル化などによって印刷物が減少傾向をたどり、2021年度で半分近くの4.8兆円にまで落ち込んだ。ほぼ同じ傾向をたどる県の出荷額は16年で955億円。県印刷工業組合の会員数は1997年の184社をピークに、現在は119社。この間に印刷技術に関わる製版や写植会社の多くが姿を消した」
復活の取り組みを次号で。
1月12〜14日、国内外の車メーカーやチューニングパーツを扱う378社が出展した世界最大規模のカスタムカーイベント「東京オートサロン2024」が千葉市の幕張メッセであった。車ファン23万人が来場し大盛況。初日の一般公開前には大手メーカーのトップらが報道陣向けプレゼンで、それぞれ個性的にPR合戦を繰り広げた。
トヨタの豊田章男会長は「普通のクルマ好きのおじさんモリゾウ」と名乗り登場。ブースを沸かせた。日産やホンダは最新コンセプトカー、ベンツは新型車を国内で初披露。中国のEVメーカーBYDは今春に日本で発売する車種を出展し、注目を浴びた。
マツダの毛籠勝弘社長は、
「昨年、静岡と岡山で開催したマツダファンフェスタではそれぞれ予想をはるかに上回る来場者でにぎわった。レース観戦やものづくり体験だけでなく、買い物やランチなど幅広いコンテンツを用意したこともあり、笑顔にあふれるイベントとなった。私たちはもっと車の運転や、遠くへ出かける楽しさを味わい尽くしたいと考えている」
昨年11月にブランド体験推進本部を新設したことに触れて「クルマを楽しみたい人のブランド」へ成長させていくビジョンを発表。カーボンニュートラルと「走る歓び」の実現に向け、独自技術のロータリーエンジン(RE)開発グループを2月に復活させると明言し、胸を張った。「昨秋のジャパンモビリティショーで発表したコンセプトEV『ICONIC SP』は発電用の2ローターエンジンが生み出す長い航続距離に加え、スポーツカーとしても一級品の性能を備えている。REに期待する多くの賛同・激励を受け、夢に近づく技術者の再結成を決めた。課題は甘くない。だが、飽くなき挑戦の新章へ一歩としたい」
後半は前田育男シニアフェローが登壇。近く市販する、レース車の要素を織り込んだロードスターとマツダ3を公開した。
「21年から活動するレースチーム『マツダ スピリット レーシング』がサーキットで得た知見を日常の運転につなげる狙い。チームと同名のブランドを立ち上げ、エンジンやサスペンション、内外装などに手を加えた特別仕様車を商品化する。レースは技術を鍛え、人を育てるための究極の実証実験の場だ。マツダらしい車造りを続けていくため、人材や技術を将来への財産とする」
自らチーム代表を務め、旺盛な開発意欲をにじます。
世界の車メーカーが自動運転や電動化に向かう中、エンジン技術を高め、レースの経験を生かしたいという。巨大な車業界にあって小さな存在に過ぎないマツダならではの隙間戦略に思えるが、トヨタの豊田会長も同日、昨年の自身の活動を踏まえ、
「レースやラリーを通じ、子どもたちに車の楽しさを伝えること。加えてエンジン技術を磨く社内プロジェクトを立ち上げる。最近はエンジン産業の行く先を案じた銀行が、開発製造に関わる人への融資を断ることもあると聞く。日本の産業を支えてきた彼ら、そしてその技術を失ってはいけない。未来へ、車好きの仲間をつくり守っていく」
トヨタとマツダ両社には車メーカーの志が相通じ合うのだろう。それぞれのトップは自らレース車のハンドルを握るほどの車好きだ。その端々に情熱がほとばしり、まさに「指揮官先頭」に立つ。
地球が沸騰する時代が到来する。少々過激なフレーズに思えるが、国連のグテーレス事務総長が危機感を訴えた。これから地球はどうなっていくのか、多発する自然災害や異常気象が一人一人に警告を突きつけてきた。
岸田首相は、昨年11月末〜12月13日にドバイであった「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)」や「世界気候行動サミット」に臨み、経済全体での温室効果ガス削減目標を設定するほか、25年までに世界全体の排出量ピークアウトを実現する必要性をアピールした。
日本で脱炭素と経済成長、産業競争力の強化を両立させるためには、何と10年間で150兆円を超える官民のグリーントランスフォーメーション(GX)投資が必要という。今年2月ごろに「GX経済移行債」(10年間で20兆円規模)を発行するほか、24年度には地域脱炭素交付金を大幅増額する予定など、さまざまな施策が動き出す。
マツダは35年に国内外の自社工場でカーボンニュートラル(CN)を実現する目標を掲げる。まずはCO2排出量全体の75%を占める国内拠点で集中的に推進し、モデルケースとして海外拠点へ広げる考えだ。30年度にはCO2排出量を13年度比で69%削減する。22年度で国内の主要な生産4拠点のCO2総排出量を同33.4%(37万1000㌧)減らした。さらにその倍を削減する道のりは険しい。向井武司専務は、
「つくる、はこぶ、つかう、もどすといった、それぞれの過程でCO2排出量を減らし、ロードマップを着実に進める。豊かで美しい地球と永続的に共存できる未来を目指し、50年にはサプライチェーン全体でCNを実現したい」
三本柱で具体的な取り組みを定めた。一つは省エネ。CO2排出量の抑制と同時にコスト削減につながる投資を行い、CNと事業成長を両立していく。照明のLED化、空調機器の高効率化、シミュレーション技術を用いた省エネ方法などを予定。従来に比べて低い温度で塗装できるよう技術革新も図る。
二つ目は再生可能エネルギーの導入。関連会社が宇品工場で運営する発電設備の燃料を石炭からアンモニア燃料専用に転換する。四国電力や三菱商事などと協力し、香川県のターミナルから内航船で同工場までアンモニアを輸送する仕組みを構想している。コーポレートPPA(再エネ購入契約)なども活用し、30年度時点での非化石電気の使用率を75%に引き上げる。
三つ目にCN燃料の導入を挙げ、社内輸送などで使う車両の燃料を軽油から次世代バイオ燃料などに切り替える。森林保全などのJ‐クレジットも活用する。カーボンニュートラル・資源循環戦略部の木下浩志部長は、
「購買本部が関わり、サプライヤーなど約70社のロードマップ作成を進めている。それぞれの特性を踏まえた取り組みを検討するとともに、当社社員の派遣や技術サポートなどを通じて成功事例を水平展開していく。コーポレートPPAにも加わってもらい、枠組みを広げたい。一歩ずつ進めていく」
本気度が伝わってくる。若者の車離れにブレーキをかける狙いもあるのだろう。将来の消費行動の中核を担う「Z世代」は環境問題への意識が高く、CNに取り組む企業姿勢にも鋭い視線を向ける。車メーカーにとって企業の生存がかかっている。
儲かるなら何でもやる。本当かと思うほど悪質な手口で企業の不祥事が相次いだ。ビッグモーターの自動車保険の保険金不正請求は、靴下に入れたゴルフボールで車体をたたき、ドライバーで傷つけるという卑劣なやり方が露見した。こともあろうに謝罪会見で経営トップは「ゴルフを愛する人に対する冒涜です」と語り、世間を唖然とさせた。
ダイハツ工業は最も大事な車の安全性を軽視し、衝突試験などで認証不正が発覚。生産停止に追い込まれた。こうした不祥事の裏側に経営者の身勝手や業績ファーストの考えが透けて見える。
一体何のための経営か。社員の幸せのためならと、骨身を削る中小企業経営者は多い。儲かるなら何でもやるという考え方とは遙かにかけ離れる。とんだ勘違いから経営を危機に追い込んだ責任をとるすべなどない。
政界も混沌としてきた。G7広島サミットで岸田政権の支持率が上向き、長期政権さえ期待された。だが自民党派閥の政治資金問題を巡る事件で支持率が急降下。自民党におごりや油断はなかったか。まさに天網恢々疎にしてもらさず。国、人を導く大役を背負った政財界リーダーの謙虚さ、自ら襟を正す心構えはどこにいったのだろうか。
これで満足だと言う時は衰える時である。天命を楽しんで生きることが処世上の第一要件である。日本資本主義の父と称された渋沢栄一の言葉という。昨年は政界、経済界に多くの教訓を残した。
さて、新年はどうか。ひろぎんホールディングスの経済産業調査グループ長の河野晋さんは、
「今後も緩やかな回復基調をたどると予想している。物価上昇率を上回る賃上げを実現できるか、大きなポイントになりそうだ。人手不足はますます深刻で、賃上げを促す要因になると思う。コロナ禍を脱して上昇していた消費マインドは、7月をピークに物価高などにぶつかって低下に転じていたが、賃上げで家計が豊かになり、消費を促し、企業収益が上向く。こうした好循環に乗せることができるのか、どうか。反対に物価上昇が続き、賃上げが抑えられると消費が下振れする可能性もある」
同経済産業調査部のアンケート調査では、2024年度に「賃上げを実施する方向」と回答した企業が8割近くを占め、賃上げの機運は維持されている。
大企業を中心とした業績は好調で、企業の内部留保は過去最高水準に達している。これらを背景に設備投資意欲は強く、競争力強化に加え、生産性向上に向けた合理化、省力化などの設備投資は底堅く推移するとみられる。
広島県の輸出は円安の進行と単価改善などにより、コロナ禍前の19年を大きく上回って推移。米国向けは半導体不足を解消した自動車が上向く中で底堅い。しかし世界経済の減速と緩やかな円高推移が見込まれており、全体では横ばいを予測。
やはり広島サミットの効果は大きい。行列ができる平和記念資料館の入館者、宮島の来島者共にコロナ禍前の水準を上回り、宿泊者数もインバウンドを中心に前年比2桁の増加が続く。街中では外国人観光客が目立つ。サッカースタジアムの開業などで観光関連はにぎわいそうだ。だが油断はできない。人手不足をどうやって解消するのか、多くの難問を抱える。天命を楽しんで生きる覚悟こそ先決か。
広島からユニコーン企業が現れるだろうか。昨春に「ひろしまユニコーン10」プロジェクトを立ち上げた湯崎知事は「広島からユニコーンに匹敵する企業を10年間で10社創出する」と目標を掲げた。ユニコーンとは「評価額が10億㌦以上で、設立10年以内の非上場企業」を指す。米国にはたくさんいるという。
さて、いま、県内に企業価値が1000億円を超える企業は何社あるのか、会社四季報によると5月時点でわずか9社にとどまる。マツダ、中国電力、エフピコ、イズミ、ひろぎんホールディングス、福山通運、中電工と広島を代表する有力企業が名を連ね、そこに半導体製造装置のローツェ(福山市、評価額1758億円)、太陽光発電最大手のウエストホールディングス(西区楠木町、同1394億円)の2社が食い込む。
ウエストHDは脱炭素化の世界的な流れを追い風に、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーで業界の先頭を走る。吉川隆会長(73)が1981年に創業。建材卸、瓦事業、戸建て事業、リノベーション、戸建て向け太陽光発電、メガソーラー事業などに遷移させながら企業価値を高めてきた。吉川会長は、
「新事業の糸口はビジネスにはらむ矛盾の中にある。供給者視点でなく、利用者目線に立つと不透明なことは多い。そこにメスを入れてきた」
例えば瓦事業。従来は坪単価だけで金額を見積もる商習慣があったが、同社は使う製品や部材ごとに価格を明確化し、市場を切り開いた。
「本来は目的を達成するための方法(手段)なのに、それが逆転し方法が目的化することがある。方法は限りなく存在し、そこに変化を促していく。失敗することよりも、変化を恐れてやらないことのほうが問題だ」
会長自らまとめた社員向けの小冊子「あなたをあきらめない。」に変化を創造する大切さを述べる。
「企業は社員一人一人が向上心を忘れたその時から衰退が始まる。好調の時ほど、何かを達成した時ほど、衰退に向かう最大の危機です。これは企業だけではなく個人も同じです。良い状態になったら、そこに満足し保身に走らず、新しい目標に挑戦していくことが大切。いい状態になったらそこでいったん断ち切って見直してみる。そこから素早く次の行動に移る。これが変化を創造する秘訣ではないでしょうか」(抜粋)
2004年に株式公開を果たし、現在の連結社員数は約500人。一般的に組織が大きくなると〝大企業病〟に陥る弊害がつきまとう。
「企業の成長とともに安心感を抱くようになる。それが安易な考えや気配りの欠如、積極性の喪失につながっていないだろうか。大きい船だからといって沈没しないわけではない。船は大きくなると小回りが利かず、急な危険を回避することが困難になる。これは企業も同じことです」
山あり谷あり。体験に裏打ちされた企業経営の鉄則を分かりやすく、人生の指針も優しく語り掛ける。
12月1日に陸上風力発電への参入を発表するなど、攻めの姿勢を貫く。わが社は穴ぼこだらけ。完璧でないからこそ頑張れる。いつも発展途上だが、超える壁が大きいほど仕事は面白いと言う。
来年4月、障害のある人への「合理的配慮の提供」が事業者に義務化される。例えば飲食店で車椅子のまま着席できるように備え付けの椅子を片づける、段差に携帯スロープを渡すといった対応の一方で、本来の業務を超える食事介助などの過度な負担は対象外。その場の判断が難しそうだが、大切なのは相手を知る努力と、対話を通じた解決策の検討という。
県パラスポーツ協会は9月30日〜10月1日、障害の有無に関わらず誰もが楽しめる「インクルーシブ・スポーツ・フェスタ広島2023」を初めて開いた。東京五輪・パラリンピックなどで高まる機運を一過性にせず、広く知ってもらおうと企画した。東広島市の運動公園をメイン会場に、周辺の呉、竹原、三原、三次市、大崎上島、世羅町で16競技の体験会などがあった。同協会会長を務める山根恒弘さん(ヤマネホールディングス取締役会長、81歳)は、
「障害のある人を対象とした障害者福祉という考えから、さらに深く踏み込み、あらゆる垣根をなくして共生社会をつくりたい。スポーツ用義肢などを装着した障害者と同じフィールドで汗を流すインクルーシブ・スポーツの果たす役割は大きい。広い視点で見ると、健常者を含めて全員に他人と違う個性がある。相手の立場を理解しない〝自分勝手な区別〟が、社会に疎外や排除を生んでしまう」
フェスタは走り幅跳びの中西麻耶選手やボッチャの古満渉選手、やり投げの白砂匠庸選手、車椅子バスケの香西宏昭選手ら日本代表パラアスリートをはじめ、地元プロチームの現役選手やOBが来場。障害のある人の家族や友人、職場の仲間、ボランティアや観客などを含め約3000人が参加し、トークイベントや競技体験で一緒に盛り上がった。来年以降も、県内を四つのエリアに分けて順次開催する考え。
山根さんは広島大学工学部在籍時に体育会ヨット部の設立に携わった。2004年から県セーリング連盟の会長を務めており、市スポーツ協会会長なども経験。
「18年に、誰でも操船できるように考案されたハンザ(ヨット)の世界大会を観音マリーナに誘致したことが思い出深い。11人の重度障害者が5日間のレースに挑む姿に感銘を受け、特別に表彰しようと思い立った。ところが、国際団体の役員から『オールワンだ。区別するな』と諭された。そのとき、インクルーシブの意味を真に理解した」
地場大手の住宅会社を長年にわたり経営。家造りだけでなく、健康な暮らしを続けてもらうための介護事業まで一貫し、ライフパートナーとして住む人の「豊かな暮らしづくり」を重視してきた。
「現代社会は、何事も経済的な指標の前年対比で判断しがち。物が増えて本当に豊かになったのか、ふと疑問が湧く。世界人口は100年前から4倍強の80億人に拡大したが、それに比べると寿命の伸び幅は極めて低く、一人一人の人生に目が行き届いていないように思う。例えば障害者や後期高齢者が車を運転しないことは当たり前ではなく、自由に移動できる技術を生み出し普及させることが正しい在り方だろう。利益だけを追求してはいけない。競争ではなく〝共生〟の観点は今後、企業姿勢としても問われてくるのではないか。インクルーシブ・スポーツを通じて、こうした考えを芽吹かせることができると信じている」
売り手よし、買い手よし、世間によし。近江商人の「三方よし」の考えは、いまも変わることのない企業経営の要諦だが、折々、業績ファーストに走り、違法な商いが世間を騒がす。やがて経営破綻する先は多く、長く経営を続けることは並大抵ではない。
近年は地球を守り、ワークライフバランスを大切にする会社が人気を集める。若者が就職先を選ぶときの大事な指針になり、人手不足にあえぐ企業にとってよそ事では済まされない。社会貢献への意識も高く、地域と歩む中小企業に関心を寄せる若者も増えているという。
軽自動車販売のサンボレ(佐伯区千同)は2006年に創業来、大切にしていることがある。会社は地域によって生かされており、少しでも地域に役立つことはないかと考え、いつも気を配る。いまは緊急車両のレスキュー業務に力を入れている。毎年のように発生する自然災害。車を生かせないかと18年からスタートさせた。ここ数年は毎年3000件以上の出動要請に応じ、県内の登録事業者のうち最多となった。小田修久社長(46)は、
「平均して1日に約10件、延べの出動時間は2万2000時間に及ぶ。車に関する緊急時の対応ノウハウはプロと呼べるまでに高まったと思う。ハザードマップを見ると当社のある地域は70年ごとに浸水の可能性がある。自治体と防災協定を結び、効率的に運営できないだろうか。被災地へレッカー車で駆け付けるがけん引できるのは1台だけ。何とももどかしい。豪雨の被災地に近い地域の小学校などを開放してもらえれば、レッカー車をピストンで走らせて被災車両を運ぶことができる。現場は一分一秒を争う。経験で得たノウハウを生かせる方策に落とし込みたい」
社名は「三惚れ」に由来。土地にほれ、仕事にほれ、女房にほれる。家訓として祖父から受け継いだ言葉をそのまま社名とした。
「自分のいる場所に根を張り、地に足を着けて仕事に取り組む。周囲の人に役立ち、家族や仲間を守り抜く。祖父の教えが礎となっている」
20年春から新型コロナ感染が拡大した時は、公共交通機関には乗りたくないが、車を持っていない近所の人のために無料レンタカーを実施。経済的に追い込まれた人には車検の基本工賃を無料化するなど、気付いたことは端から手を打ってきた。設立の翌年に始めた「サンボレ祭り」は毎年、来店者が1500人を超える地域のイベントに定着。下校する小学生が店に立ち寄ってトイレを借りていくのが日常の風景だった。19年に佐伯区屋代から現在地に移転した直後のコロナ禍で、その祭りは中止しているが機会をうかがう。
ここ数年、売上高は前年比2割増で推移し、創業来の黒字を続ける。従業員は9人。
「社会性、独自性、経済性の順番で物事を考えていくことにしている。むろん利益は必要。だが最も優先すべきは社会に貢献することだと信じている。きれいごととよく言われるが、公益性のある資本主義を実現することが、一番の経営テーマだ」
今年は本社近くに新築した指定工場2階に半面のテニスコートを整備した。地域の子供たちが人の目を気にせずに体を動かせるようにと広く解放する。
いつも一生懸命。三方よしの一つでも信を失えば商いは成り立たないと話す。
何とかなると高をくくり、もし間に合わなかったら大ごとである。深刻化する人手不足に加え、働き方改革関連法で猶予期間のあったトラック運送や公共交通、建設、医業などで、来年4月から時間外労働の上限規制が始まる。
近年はアマゾンなど通販を利用する人が多いためか、物が届かなくなるかもしれないと危機感が広がり、国は物流の2024年問題対策に乗り出した。
スムーズな配送網を維持するためには、荷主を巻き込んだ業務効率化や適正運賃の交渉、労働環境の改善を通じた運転手の確保などが不可欠となる。国は7月に「トラックGメン」制度を始め、中国運輸局では職員13人を任命。ヒアリングを通じて、適正な取引をさまたげる疑いのある荷主や元請事業者に対して是正を働き掛け、改善計画を定めてもらう。
現在、4社に恒常的な長時間荷待ちの解消などを求めている。月間約100件をパトロールし、11月22日現在で478カ所を巡った。運送事業者が荷主に対して要望しづらい、運賃適正化の必要性などを伝える。自動車交通部貨物課の田中幸久課長は、
「4回のオンライン説明会に計400人近くが参加し直近は荷主も100人が聴講。既に改善策に着手した先もあり、危機感が浸透してきた」
トラック運送は労働時間の長さが敬遠され、有効求人倍率が全産業平均の約2倍と慢性的な労働力不足が続く。働きやすい環境を整え、賃上げに踏み切るために収支を改善したいが、燃料高騰で経営環境は厳しい。運賃交渉は同業他社に乗り換えられるリスクを伴い、気をもむ。同局は、中国経済連合会に適正な運賃と取引の協力要請を続けており、4月に中国経済産業局、広島労働局と局長3人の合同で要望を出した。中国運輸局の益田浩局長は、
「燃料高騰に応じた運賃設定を再考してもらいたい。運転手は積み下ろしの前に数時間待たされることが多い。荷主とは運命共同体。物流を弱体化してはいけない」
荷主の自発的な取り組みを促そうと、19年からホワイト物流推進運動を呼び掛けている。県内では11月22日現在でマツダやイズミなど大手6社をはじめ、運送含む計38社が賛同する。例えばマツダは燃料高騰に応じた割増料金「サーチャージ制度」を導入したほか、効率的な部品積載を推進することで、運送委託先の運転手の無駄な業務の削減につなげた。サプライヤーにも事例を共有し、協力を求めている。
マツダ系列の広島ロータリー輸送は荷役作業を分離し、運転手が配送に専念できる環境を整えた。GPSを使うクラウド型運行管理システムでリアルタイムに車両の状況を把握し荷待ち時間を削減。22年の1人当たりの年間残業時間は422時間で、19年に比べて107時間減った。同社は、広島労働局の「ベストプラクティス企業」に認定。
労働局の釜石英雄局長は「モデルケースとして県内企業に情報発信する」と期待を込める。さっそく11月15日に広島運輸支局の鬼村栄支局長と共に、両社とマツダロジスティクスを交えて意見交換した。鬼村支局長は、
「運転手になりたい若者が減り、高年齢化している。トラックがあっても物を運べない状況になりかねない」
産業や人の暮らしを支える物流改革は待ったなし。手遅れは許されない。